経済・社会

2026.02.06 16:15

『資本主義が嫌いな人のための経済学』著者に聞く、資本主義の欠陥と希望

——新著『資本主義にとって倫理とは何か』では、「市場の失敗アプローチ」が企業活動に対して持つ含意が論じられている。「市場の失敗アプローチ」の枠組みの下で、倫理的企業はどんな活動を行うよう求められるか。

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私のビジネス倫理へのアプローチ(市場の失敗アプローチ)の中心的な特徴は、次のような認識にある。すなわち、経済的インタラクションは市場という制度的文脈において生じており、市場という制度は、人々に戦略的・自己利益的な仕方で行為する大きな自由を与えるよう設計されている。これが意味するのは、日常的なふるまいを統制する道徳的ルールの一部が、経済の文脈には直接に適用できなくなるということだ。一部の人はここから進んで行き過ぎた主張を行っており、資本主義経済は開拓時代のアメリカ西部のような、利潤追求のためなら何をしてもいい領域だと論じている。

私の議論の目標は、本書で述べているように、ビジネスパーソンに天使のようにふるまうことを求めず、他方で悪魔のようにふるまうことを認めもしない、そんなビジネス倫理理論を構築することだ。この難問を解く鍵は、経済的制度のそもそもの目的、そして、私たちが競争的・敵対的なプロセスを制度化することを選んだ理由に焦点を当てることにある。この問題に対して経済学者たちが提示してきた標準的な答えは、「市場という制度は経済的効率性を高める」というものだ。経済学者はまた、市場が効率性を高めることに失敗する条件も明確化してきた。これは「市場の失敗」として知られている。

そういうわけで、「市場の失敗アプローチ」の中心となるのは次のような要請だ。すなわち、企業を含む経済主体は、市場の失敗をもたらすような状況を利用するのを避けるべきである。これが指針的なアイデアとなって、もっと具体的な行為基準を詰めていくことができる。

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——日本では、移民(日本政府はこの言葉を使うのを避けているが)の増加が大きな政治的争点となっている。最近の選挙では、参政党という反移民政党が大きく飛躍した。カナダは移民統合の成功例と見なされることが多いが、日本はカナダから何を学べるか。

カナダのケースを日本に一般化することは非常に難しい。第1に、カナダという国は植民地化によって生まれたので、人口の大部分は、その領土に対して先祖以来の強い権利意識を持っていない。第2に、カナダは、フランスの有していた北米の主要な植民地をイギリスが獲得することで成立したという経緯がある。そのため、国内には敵対関係にあったヨーロッパの2つの国(イギリスとフランス)に祖先を持つ大規模集団が存在し、常に言語と宗教による分断線が走っている。結果として、カナダは日本ほど文化的・言語的に同質な状態になったことがない。カナダの制度は昔からかなり多元的なので、移民によって多元性が増大しても、それほど大きな難題とはならないのだ。

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高橋泰地(経済学101)=インタビュー・文

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