経済・社会

2026.02.06 16:15

『資本主義が嫌いな人のための経済学』著者に聞く、資本主義の欠陥と希望

——資本主義を批判する人々の多くが指摘してきたように、資本主義は様々な欠陥を抱えているように見える。資本主義が私たちにとって最良のシステムなら、資本主義の枠組みの中でその欠陥を是正する方法はあるのか。

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資本主義の欠陥の一部は、明らかに是正可能であり、実際是正されてきた。20世紀中盤まで、資本主義は極めて不安定なシステムで、好況と不況が絶え間なく繰り返されていた。マルクスは、資本主義システムが根本的な矛盾を抱えており、やがて不可避的な危機に至ってシステム自体が崩壊する、と論じたが、その主張の背景にあったのは当時のこうした経済のあり方だ。1960年代までに、こうした問題の原因はきちんと診断され、完全には是正されていないとしても、かなりの程度改善された。結果、資本主義がひとりでに崩壊すると予測する人はほとんどいなくなった。

同時に、資本主義の欠陥の一部は取り除けないということを認識するのも重要だ。経済の組織化には常にトレードオフが伴う。とりわけ、市場経済では、不平等や分配的不正義に関わるある種の懸念に対処するのが極めて困難だ。なぜなら、価格メカニズムは、取引の利益を再配分するための介入に抵抗するからである。だからといって何もできないというわけではない。課税システムという、再分配のための強力な手段もある。だが、市場に資源配分を任せることは常にいらだちの種であり続けるだろう。市場の作動に混乱をもたらさないようにしながら分配の問題にアプローチするには、多くの人が好むよりも間接的なやり方をとるしかないからだ。

——SDGsやESG投資のような近年のトレンドは、現実の資本主義を、ヒース教授が理想とするようなあり方に近づけるものと言えるか。

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SDGsとESGはかなり異なるものに思える。SDGsは国連が策定したもので、主として各国の政府を対象としている。一方でESG投資は、投資家や株主による動きであり、民間企業の経済活動に影響を及ぼそうとするものだ。私はいかなる形でもESGのような実践に反対していないが、ESG投資のメカニズムは、国家による伝統的な規制活動と比べると極めて弱い。例えば、社会的意識の高い投資家が、新しい化石燃料設備に投資するのを控えても、その影響力は、国家が課す包括的な炭素価格づけ制度に比べれば極めて限定的だ。ESGの熱心な支持者の一部は、それが伝統的な国家規制を代替するものになり得ると主張しているが、私の考えでは、せいぜい国家規制に対する補完にしかならない。

SDGsに関して言うと、反対すべき点は何一つないように思う。

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高橋泰地(経済学101)=インタビュー・文

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