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2026.02.13 20:00

アジアを牽引するヘルスケア・エコシステムへ。HVC KYOTO発足10年の軌跡と未来

英語ピッチの導入、アカデミア×スタートアップの新たな接続、2026年1月時点で累計830億円の資金調達──ヘルスケア領域に特化した日本最大級のプラットフォーム「HVC KYOTO」は、京都から日本のヘルスケアエコシステムを築いてきた。10周年を迎えたいま、創設者とパートナー企業、アルムナイの3名が、その軌跡と次の10年を語る。


──HVC KYOTO(Healthcare Venture Conference KYOTO。以下、HVC)発足の経緯を教えてください。

小栁智義(以下、小栁)ボストンのインキュベータースペース「LabCentral」と、スタンフォード大学のトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の教育プログラム「SPARK」との出会いがきっかけでした。

どちらもバイオテクノロジー領域のスタートアップを支える仕組みです。その考え方を取り入れられれば、米国から20年遅れている日本のライフサイエンス領域を変える起爆剤になる。そう考え、LabCentralのCEOヨハネス・フルハーフとSPARKを開発したダリア・モシーローゼン教授を日本に招いたイベントを企画し、そこにライフサイエンス版ベンチャーカンファレンスの要素を掛け合わせました。

そうして生まれたのがHVCです。採択されたスタートアップには2度の事業アドバイスセッションを行った後、事業提携先や出資先とのマッチングの機会となるDemo Dayに参加してもらいます。ビジネスピッチは英語ですが、これは世界の最先端を集めた結果、自然と前提となっていきました。

HVC KYOTOのリードアドバイザーを務める小栁智義。京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構ビジネスディベロップメント室 室長 特定教授
HVC KYOTOのリードアドバイザーを務める小栁智義。京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構ビジネスディベロップメント室 室長 特定教授

楠 淳(以下、) 英語開催になった理由として、私と小栁先生共通の問題意識もありました。日本の課題は、基礎研究でノーベル賞学者は出ても社会実装につながりにくいことと、海外の投資家や製薬企業に研究の魅力や優位性が伝わらないことです。その要因のひとつが英語でのコミュニケーション能力不足。ほかの要因とも相まって、メガファーマは日本を素通りし、中国やシンガポールに行ってしまった。

だからHVCではせめて英語でのコミュニケーションに慣れてもらい、メンタリングによってプレゼンテーションとその他のアウトカムがどう変わるのかを見ていくことになったのです。

小栁 正直にいえば、10年前の参加者のコミュニケーション力は決して高くありませんでした。試行錯誤するうちに我々から問いかけたほうがいいことに気づき、事業アドバイスセッションではアドバイザーから質問を投げかけ、Demo Dayのピッチ後にもQ&Aセッションを設けています。

我々のミッションは参加者に話をさせることではなく、その情報をVCや製薬企業の人たちの頭に残すこと。その意味でもライブ感があるQ&Aセッションは有効だと考えています。

 10年前と比較して、HVC参加者の英語力は確実に向上していますよね。

Johnson & Johnsonの楠淳。
Johnson & Johnsonの楠淳。

ネットワークによる事業成長を後押し

──実際に、HVCはどのように事業成長を後押ししているのでしょうか。

 例えば、ピッチ資料のグローバルスタンダード化です。日本のスタートアップやアカデミアの資料の多くは学会発表資料に近く、事実を発表するだけになっている傾向があります。サイエンスばかりでビジネスモデルの話がまったく出てこない。その点は米中韓国などと比べて遅れていますので、まずは製薬企業や投資家に興味をもってもらうための「技術紹介資料」を作成するなど本来の目的を果たすためのノウハウを伝えています。

ほかに、社会実装を目指すための考え方についてもアドバイスします。アカデミア研究は目の前の患者さんに関心が向きがちですが、メガファーマではマーケットの大きい疾患を中心に戦略を設定しますので、この違いを理解することが重要です。我々の研究成果やデータの評価基準となる実験方法や材料を伝えるといったケースもあります。

製薬業界は閉じた業界で、企業の研究開発のノウハウをもたないスタートアップは道標がなく、もがいている状態です。研究のノウハウやマイルストーンなどの考え方に触れられる場として、積極的に情報を引き出すつもりでHVCを活用してもらえるといいと思います。

──シノビ・セラピューティクス(当時サイアス)は2018年のHVCに参画しています。何が得られたと思いますか?

等 泰道(以下、) HVCのネットワークの一員に加えていただけたのが大きかったですね。当時は横のつながりがまったくありませんでしたから。それによってさまざまな支援を受けることができました。特にジェトロ京都さんにはボストンへ連れていってもらい、現地のVCやライフサイエンス企業と話をする機会を得られました。初対面のVCに話をしても「臨床に入ったらまたおいで」で終わることがほとんどですが、HVCをきっかけに少しずつ聞く耳をもってもらえるようにもなりましたね。

小栁 HVCを通じてネットワークができたのは、最も大きな成果のひとつだと思います。

 飲み会やアルムナイイベントなども貴重な機会でした。特に京都は小さい街なので、横のつながりのアドバンテージは大きいですね。

米国への本社移転が示す日本発バイオ企業の可能性

──シノビ・セラピューティクスは22年に本社を米国へ移しました。その背景について教えてください。

 目的は米国での資金調達でした。当社は京都大学iPS細胞研究所の金子新教授の研究成果を基に、再生T細胞の臨床応用に向けた研究開発を進めていました。最初は自家(自分の細胞をもとにすること)のiPSからいわばテーラーメイドな製薬を目指しましたが、これは優れた薬効をもつ可能性が高いものの高額です。そこで他家(他人の細胞をもとにすること)の治療剤をつくる方向にシフトしたものの、なかなか資金が集まらない。一定の成果があったとはいえ、研究スピードはスローでした。

一方、米国に目を向けると、我々と同じような研究開発を進めるバイオテクノロジー企業が数百億円を集めていました。17年ごろの米国ではiPSから治療剤がつくれると信じていない人が大半でしたが、それでもそれだけの資金調達に成功していた。しかも、研究内容はうちのほうが出来がよかったのにもかかわらずです。それなら当社も米国で資金調達を行い事業スピードを加速させようと判断しました。

──組織の変更は事業展開にどう影響していますか?

 米国には細胞治療の専門家が多く、治験の進め方や製造方法などのフィードバックを得やすい環境でした。21.3億円の資金調達を行ったことで、優秀な人材を集めやすくもなった。環境が整い事業展開のスピードは上がりましたね。

小栁 個人的に「日本のスタートアップはシリーズAから米国に行ったほうがいい」と言い続けてきました。それをまさに実現していただき、やったぜという気持ちです。

 ただ周囲を見わたすと、やはり英語でのコミュニケーションに苦労する日本人が多いのを感じます。

技術や能力で劣るわけではないけれど、言葉がまともに通じ合わないだけで低く見られてしまうことが起きている。だからこそ、HVCのビジネスピッチが英語開催である意味は大きい。自分がいかに狭いところにいるかよくわかりますから。

シノビ・セラピューティクス 代表取締役の等泰道。
シノビ・セラピューティクス 代表取締役の等泰道。

京都を「アジアのゲートウェイ」にHVC KYOTO 2.0へ

──HVCピッチ登壇者の累計資金調達額は830億円(2026年1月現在)を記録し、第7回日本オープンイノベーション大賞で経済産業大臣賞を受賞するなど、HVCへの注目は増しています。10年間の成果をどう評価しますか?

小栁 まず、Demo Dayが非常に価値あるイベントに育ってきたと思います。我々はグローバル基準のアドバイザーからの貴重な評価コメントを重視していて、毎年多くの海外ゲストを招待しています。

例えば25年のピッチプログラムにアドバイザーとして参加したジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、JJ)のシャロン・チャンさん(アジアパシフィック ヴァイス・プレジデント)。彼女はピッチについて気になることがあったらマイクを奪ってでも喋っていましたが、このようにグローバル基準のハイクオリティーな評価コメントが聞けるピッチイベントはほかにありません。HVC KYOTOは主催やパートナー企業のみなさんのお力添えで参加は無料です。海外なら参加するだけで数十万円はかかるでしょう。

先ほど等さんがジェトロ京都とボストンに行った話をしていましたが、その取り組みがジェトロでプログラム化され、気づけば国の何十というスタートアップ支援につながった。協力してくださる方々や参加者の皆さんと一緒に走ってきたのだと思います。

 そろそろ「HVC KYOTO 2.0」を考える時期かもしれないですね。国のサポート体制が増えてきたなかで、HVCの役割とは何なのか。

例えば、コミュニティーはパートナリングを考えるうえで重要な要素です。似たような技術が複数あった場合、同じコミュニティー内のほうがパートナリングに有利である現実があります。日本の技術の優位性が高いと客観的に評価ができても、コミュニティーの内外ではその後のスピード感に差が出てしまう。そうした現状を打破するためにも、米国のVCやインキュベーター/アクセラレーターとHVCが堅固な仲間になれるプラットフォームをつくる必要があるのではないでしょうか。

小栁 クロスボーダーなエコシステムを構築したいですね。HVCで話題になっていることがボストンやシリコンバレーでも話題になり、向こうで話題になっていることがHVCでも話題になっている状態にしなければいけない。そのためにはスタートアップだけでなく、VCもどんどん海外に連れていく必要があります。

 まずはアジアでの日本のプレゼンスを上げることをマイルストーンのひとつとしたいですね。HVCはアジアでも歴史があるピッチイベントのひとつですし、いまやJJのグローバルでもHVCは有名です。10年で基盤は築けたのではないでしょうか。

 HVCのネームバリューは国内外で上がってきていますよね。自分たちの仕事を訴える場として、HVCはとても貴重な機会だと思います。

小栁 京都という場所をうまく使い、アジアのゲートウェイになる。それは目指したいことのひとつです。あまり知られていませんが、ASEAN主要国には日本の承認結果を参照する仕組みがあり、日本を経由すると市場参入のハードルが実質的に下がるんです。つまり東南アジアのヘルスケア改善のミッションを日本は担っているとも言える。この動きをどう広げていくか、次の10年を考えていきたいですね。


HVC KYOTO 2026 Demo Day開催決定!

11回目のDemo Dayが今年も開催決定!10周年を経て、アルムナイとともにさらなる進化を続ける白熱のイベントを見逃すな!

【開催日程】2026年7月13日(月)・14日(火)

【会場】京都リサーチパーク4号館(京都府京都市下京区中堂寺粟田町93)

ピッチへの参加エントリーは2026年2月16日から開始。詳細は以下リンクより、HVC KYOTOのホームページをチェック。

HVC KYOTO
https://www.krp.co.jp/hvckyoto/


こやなぎ・ともよし◎京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構ビジネスディベロップメント室 室長 特定教授。BioLabs社と協働し、起業家教育と支援サービスに特化したBioLabs Academy合同会社を設立。

くすのき・じゅん◎Johnson & Johnson (J&J), External Scientific Innovation Asia Pacific, Japan Country lead, Senior Director。薬学博士。複数の製薬会社で長年創薬研究に従事し、 2014年より現職。

ひとし・やすみち◎シノビ・セラピューティクス 代表取締役。 熊本大学卒業、 医師免許取得。同大学院、 免疫学で博士取得。 国内外で研究開発に従事し、 約20年近くのバイオベンチャーでの創薬研究開発の経験と実績を有する。

京都リサーチパーク
https://www.krp.co.jp/

Promoted by 京都リサーチパーク | text by Natsumi Amano | photographs by Yuta Fukitsuka | edited by Asahi Ezure