アジア

2026.02.05 10:30

トランプが促す「中国ピボット」 米関税、世界の貿易構造を再編

北京で2026年1月29日、首脳会談に先だち握手するキア・スターマー英首相(左)と中国の習近平国家主席(Carl Court/Getty Images)

北京で2026年1月29日、首脳会談に先だち握手するキア・スターマー英首相(左)と中国の習近平国家主席(Carl Court/Getty Images)

中国でいま最も重要な経済指標は、北京首都国際空港に到着するVIP(要人)の数だと言っていい。

先週には英国のキア・スターマー首相が北京を訪問した。これはカナダのマーク・カーニー首相に続くもので、さらにその前にもフィンランド、フランス、アイルランド、韓国など数々の主要経済国の首脳が相次いで中国を訪れている。次に控えているのはドイツのフリードリヒ・メルツ首相だ。各国首脳が中国の習近平国家主席や李強首相に会おうと次々に北京詣でをしている状況は、「中国へのピボット」という大きな動きが世界貿易の構造をリアルタイムで再編しつつあることを物語っている。

もし米国のドナルド・トランプ大統領がひどい週を過ごしていなかったとしても、貿易戦争がなければ米国がこれらの国々やほかの国に売れたはずの財やサービスのことを考えれば、きっと気分を害したに違いない。現にトランプは、カナダが中国との取引を放棄しなければ100%の関税を課すと脅している。

同じ週の前半には、トランプが同盟国の韓国に対して再び関税を引き上げると脅す一方で、欧州連合(EU)は約20年越しでインドとの自由貿易協定(FTA)の締結で合意した。そのわずか10日前、EUはブラジルやアルゼンチンを含むメルコスル(南米南部共同市場)とのFTAも、およそ25年にわたる交渉を経て署名にこぎ着けた。

巨大な貿易協定が立て続けに成立したことについては、宇宙的な偶然の一致にすぎないと言ってみせることもできる。あるいは、数十年で最大規模の貿易戦争がトランプの経済に深刻な逆効果をもたらしていると認めることもできる。そして、この貿易戦争が、世界経済の主導権を握るという中国の構想を「再び偉大に」していると認めることも。たとえば中国の2025年の貿易収支は、トランプ関税の影響にもかかわらず過去最大の1兆2000億ドル(約187兆円)近くの黒字を計上した。

北京への最近のVIP到着ラッシュは、19兆ドル(約3000兆円)規模の中国経済と距離を置いていた各国政府が再び接近し始めていることを示している。スターマーは2018年以来初めて北京の空港に降り立った英国の首相であり、カーニーも2017年以来初めて中国を訪れたカナダの首相だった。

次ページ > 米中の間で高市首相はどう動くのか?

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事