ヘルスケア

2026.02.04 10:00

インドで確認された「ニパウイルス」感染症、治療法は存在せず

ニパウイルスの宿主と考えられているオオコウモリ。2026年1月26日撮影(Arnun Chonmahatrakool/Thai News Pix/LightRocket via Getty Images)

ニパウイルスの宿主と考えられているオオコウモリ。2026年1月26日撮影(Arnun Chonmahatrakool/Thai News Pix/LightRocket via Getty Images)

インドで先月、「ニパウイルス」の感染例が報告され、世界中に懸念が広がっている。インド保健省は、医療従事者2人がニパウイルスの検査で陽性と確認されたと発表した。うち1人は人工呼吸器を装着し、もう1人は重篤な神経疾患を患ったが、その後回復した。

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世界保健機関(WHO)によれば、ニパウイルスはまれにしか発生しないが、深刻な傷害を引き起こす人獣共通感染症で、コウモリなどの動物を介して、あるいは感染者の飛沫や体液を通じて人間に感染する。ニパウイルスは頻繁に発生するものではないが、過去には1999年のシンガポール、2001年のバングラデシュ、そして今回インドで発生している。同ウイルスの致死率は極めて高く、40~70%に上ると推定されている。これは、パラミクソウイルス科に属するニパウイルスが、宿主内で急速に増殖し、重大な疾患を引き起こす臨界量に達する能力を持っているためだ。

ニパウイルスには4~21日という比較的長い潜伏期間があり、インフルエンザのような症状や発熱、全身倦怠感といった初期症状が突然現れるのが特徴だ。その後、頭痛などの神経症状を引き起こすこともある。実際、ニパウイルス関連の急性脳炎、つまり混乱や精神状態の変化、発作、ミオクローヌス、その他の神経まひや運動まひなどの重大な神経症状につながる脳の炎症が、高い死亡率の原因となっている。そのほか、低酸素血症や急性呼吸窮迫症候群、または人工呼吸器を必要とする劇症型呼吸不全など、重篤な肺症状を引き起こすこともある。死に至らなかった場合でも、てんかんの発症や性格の変化、さらには最初の感染から数カ月または数年後に感染が再活性化する可能性など、長期にわたる神経学的後遺症が残ることが多い。

ニパウイルス感染症に対する治療法は存在しない。しかし、早期に診断されれば、頻繁なバイタルサインのモニタリングや酸素補給、特定の臓器療法など、適時に支持療法を施すことができる。米疾病対策センター(CDC)によると、レムデシビルとリバビリンがニパウイルス感染症の発生を予防・治療する可能性のある薬剤として研究されているが、現時点で正式に承認された治療法は存在しない。

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では、どのようにしたら感染を防ぐことができるのだろうか? 多くのウイルス感染症と同様、ニパウイルスの感染を防ぐ最善の方法は、病気の人や接触者がいる場所への暴露を完全に避けることだ。回避が不可能な場合は、手袋や防護服、眼の保護具、医療用マスクなどの使用が感染予防に役立つ可能性がある。また、コウモリや病気にかかった動物との接触を避け、手洗いを徹底すること。ウイルスや現在感染している人との接触が疑われる場合や自分自身に症状が出た場合、または感染の心配がある場合は、医師に相談しよう。医療現場では、接触感染予防策、飛沫感染予防策、空気感染予防策が極めて重要になる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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