経営・戦略

2026.02.04 10:30

史上最大の人員削減を発表したアマゾン、だが「AIが職を奪う論争」とは無関係

Sven Hoppe/picture alliance via Getty Images

真の要因:ポスト・パンデミックの調整

アマゾンの人員推移は、AIと関連付けられたどの物語よりも明確な説明を与えている。

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同社の全従業員数は、2019年の79万8000人から2022年には160万人へと増加した。この採用ラッシュは戦略的な計画ではなく、パンデミックによるEC需要の拡大に起因していた。そしてひとたび消費者行動が正常化すると、アマゾンは大きな余剰を抱えることとなった。

今回の人員削減は、2022年から2023年にかけて実施された2万7000人のレイオフに続くものだ。これに2025年10月以降に実施された3万人の削減を加えると、ジャシー体制下のアマゾンは合計で約5万7000人を削減したことになる。

これは過剰採用の是正であり、AIによる変革ではない。ジャシーは2024年9月の時点で、主要組織ごとに担当者と管理職の比率を最低でも15%引き上げるという目標を掲げていた。また、「官僚主義をなくすためのメール窓口」を設け、1500件の従業員からの意見を受け、455件のプロセス変更につながった。

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つまり今回の人員削減は、パンデミックの反動とする方が、AIが引き起こしたと考えるよりも、はるかに単純に説明できるのである。

研究結果が実際に示していること

AIが労働者を置き換えるとの主張の多くは、AIによって「少ない人数でより多くの仕事ができる」ことを示す、生産性に関する研究を引用している。しかし、そうした研究自体は存在するが、それが示唆することは、上記の主張とは異なるものだ。

スタンフォード大学とMITによる顧客対応の研究(2023年、ブリニョルフソン、リー、レイモンド)では、AIの支援によって平均14%から15%の生産性向上が見られたが、初級労働者では34%の改善が確認された一方、熟練労働者への影響は限定的だった。この研究は、コールセンターで1時間あたりに解決された案件数を測定したもので、人員削減数は測定の対象ではない。

ハーバード・ビジネス・スクールとBCGの研究(2023年、デルアクアほか)では、GPT-4を使用したコンサルタントが25%速くタスクを完了し、品質も40%向上したが、平均以下のパフォーマーは43%改善した一方、トップパフォーマーは17%の改善に留まった。この研究も人員削減ではなく、タスク遂行能力を分析したものだ。

いずれの研究も、従業員を削減すべき、あるいは削減されると結論づけてはいない。両者とも、AIは既存の従業員を補完するものであり、置き換えるものではないと示している。

また、「マッキンゼーは、AIが知識労働者の置き換えに特に有効だと報告している」との声もあるが、実際の2025年の調査結果は、そうは言っていない。2025年11月の報告書『Agents, robots, and us』では、米国における労働時間の57%が理論上は自動化可能であるとされた一方で、「AIによって労働力の半分が即座に不要になることはない」と結論づけている。その理由は、「現在企業が求めているスキルの70%超は、自動化可能な業務と不可能な業務の双方で使われている」からだ。

このマッキンゼーの主張は、あくまでも職務の自動化の可能性であり、雇用の消失ではない。

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翻訳=江津拓哉

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