サイエンス

2026.02.04 15:00

体の水分の4割が凍結しても数時間生存できる「ガーターヘビ」のメカニズム

Shutterstock.com

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ブリザードに襲われて目を覚ましたあなたは、自分が氷雪の塊に完全に閉じ込められていることに気づく。圧倒的大多数の哺乳類にとって、これは死刑宣告そのものだ。けれども一部のヘビは、こうした冬の緊急事態をどうにか乗り切ることができる。ただし、彼らにとっても制限時間はわずかだ。

ヘビが「凍結耐性」を備えているなんて、あり得ないことに思える──ヘビは陽だまりが大好きな変温動物なのだから。だが、このような種は確かに存在する。凍結耐性をもたらす見事な生理的メカニズムと、その限界について、以下に解説していこう。

ガーターヘビは、短時間の凍結耐性をどうやって進化させたのか

ほとんどのヘビは、凍結をできるかぎり避ける。そのためヘビは、気温が下がってくると普段の行動圏から短距離の移動をして、岩のクレバス、げっ歯類の巣穴、深い木の根の周囲といった、周囲の温度が氷点下にならない場所を目指す。このような一般的な越冬方法は、冬眠(brumation)と呼ばれる(哺乳類の冬眠[hibernation]とは異なり、体温は外気温に連動する)。

しかし、冬の訪れがいつもより早まったり、積雪量が少なかったり、ヘビがなんらかの理由で断熱性の低い隠れ家に閉じ込められてしまったりしたときには、一部の個体は凍結することがある。研究者たちは、起こり得るこのような可能性を無視せずに、1つの疑問に取り組んだ。こんなとき、ヘビに何が起こるのだろう?

答えは、短くも暴力的な「生命の中断」だ。彼らは、代謝の抑制と、いくつかの生化学的防御機構によってこれを実現している。ガーターヘビの1種(Thamnophis sirtalis parietalis)は、こうした限定的な凍結耐性の研究に最適なモデル動物だ。

1992年に学術誌『Canadian Journal of Zoology』に掲載された古典的な実験研究によれば、ガーターヘビは、外気温が摂氏マイナス2.5度まで低下し、全身の水分の約40%が凍結しても、短時間なら耐えることができる。ただしこの能力には重大な欠点があり、この状態で生存できるのは数時間だけだ。

先述の研究では、統制された実験環境下においてガーターヘビは、摂氏マイナス2.5度の気温に3時間にわたってさらされたあとで完全に回復し、研究者たちを驚かせた。しかし、曝露時間を10時間に伸ばすと、生存率は約50%まで低下した。24~48時間では、体内に大量の氷が形成されたため、生存個体は実質的にゼロとなった。

このように、ヘビにとって長時間にわたる凍結は通常致死的だが、短時間であればどうにか生き延びることができる。ヘビが、外部の熱源に大きく依存する外温動物であることを考えれば、実に意外なことだ。研究者たちは、ヘビの凍結耐性は以下の2つの協調的反応に立脚すると考えている。

1. 代謝抑制:体内の細胞外空間に氷が形成され始めた段階で、循環と酸素供給を全面的に停止する。これにより、エネルギー消費速度を大幅に遅らせて、細胞を延命することができる。

2. 抗凍結剤:一部の組織に、氷による損傷と浸透圧ストレスを抑える微小分子を蓄積する。ただし、凍結耐性をもつカエルにおいてはブドウ糖濃度の急上昇が見られるのに対し、ヘビにおいては、タウリンなどの分子が特定の組織内でゆっくりと増加するだけであり、ブドウ糖濃度の上昇幅も控えめだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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