世界的醸造家とベストセラー作家が対談 見直すべき日本の価値「ファンタズム」とは?

リシャール・ジョフロワ(IWA 創立者・醸造家)・山口 周(独立研究者 )

混沌の世界を乗り越えた先に

山口:今、声の大きなリーダーが世界を席巻し、これまで育んできた普遍性や美意識が揺らいでいます。経済的な成功をよしとする価値観が支配的になるなか、日本が新たな基準を提案できると期待されているようにも感じます。 

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ジョフロワ:消費も思想も今はまだ古い時代のなかにあり、その終着点にきています。この混沌を乗り越えたあと、どうなるべきか。文化のある国々が活躍しなければならない。その未来にスタンスをとれるのは日本ではないでしょうか。 

山口:日本人は傾聴が得意である一方、主張せよという声もありますが。

ジョフロワ:大切なのは対話です。主張し合うのではなく、耳を貸し、話をする。

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山口:美術史をひもとくと、いいムーブメントが起きたときには必ずいい批評家がいます。日本は三島由紀夫が亡くなってから随分たるんだともいわれますが、リシャールさんは、どんな声に耳を傾けるようにしていますか。 

ジョフロワ:あまり評価は気にしません。ですが、改善のためにフィードバックは重要です。厳しい言葉が新たな発見につながることもあり、IWAは変わりながら進化しています。ドンペリニヨンが最低8年熟成させるのに対し、IWAは18カ月で市場に出すので、短い期間で反応を得られる。それ以外にもIWAの酒づくりのほうが自由度が高く、ドンペリニヨンが細い道を進むのに対し、IWAは開かれた道を行く感覚です。日本は保守的だと思われているので海外でこの話をすると驚かれますが、伝統的であることと保守的であることはまったく別のことです。 

山口:ゴーギャンの「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」ではないですが、まず日本人が日本の良さを再認識することが必要ですね。 

ジョフロワ:そうですね。日本から未来と世界に向けて声を伝えてほしいです。


リシャール・ジョフロワ◎フランス・シャンパーニュ地方ヴェルテュ村生まれ。ワイン醸造を営む家系で育つ。医学博士号を取るが、一転、ワインの道へ。1990年よりドンペリニヨン醸造最高責任者となりメゾンを牽引。2019年、富山県立山市に「白岩」を設立。

山口 周◎独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究 科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティンググループなどを経て独立。著書に『人生の経営戦略』『ニュータイプの時代』など。

文=鈴木奈央 写真=若原瑞昌

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