グローバルに通じる「日本の美意識」
山口:フランスの印象派の画家が浮世絵を模写したように、日本は素晴らしいものを生みだしつつも、その価値を見出すのは常に外国人です。IWAのようにローカルかつグローバルを実践し、世界に届けていくには深い哲学が必要です。
ジョフロワ:日本人は確かに口下手で、ストーリーテリングが得意でないかもしれません。でもそれはハンデなのか? 語られないことで受け取る側が想像する──私たちはそれを“ファンタズム”と呼びますが、日本はその頂点にあります。
山口:人口減、経済低迷のなか、日本人はつい外に目を向け、失った自信を回復するために「第二のソニー、第二のホンダ......」と考えがちです。グローバルコンテクストで通じる価値が足元にあることに気づいていないのですね。私は文明的な豊かさではなく、文化的な豊かさを輸出する国になるべきではないかと考えています。
ジョフロワ:まさに、文化こそが未来です。
山口:そこで重要なのが“アートオブリビング”、生きることそのものがアートという姿勢ではないかと。フランスやイタリアにもある美意識だと思います。
ジョフロワ:その3カ国が“美の番人”ですね。なかでも日本は、日用品にも付加価値をつけることができています。単なる消費社会はそろそろ終わりを迎えるのではないでしょうか。これからは、消費の意味づけを考えなければいけない時代です。

山口:かつて日本には千利休という茶人がいて、彼は器から空間まですべてにセンスがあり、アートオブリビングを体現するような総合プロデューサーでした。多くの名刀を生んだ刀鍛冶の本阿弥光悦も、書画や陶芸にも通じていました。リシャールさんにもそんな美意識を感じます。
ジョフロワ:それぞれの分野で基礎となる技術や知識を習得することは必要ですが、それを乗り越えればあらゆる領域で自らを表現していくことができます。


