元KADOKAWA社長が語るメディアミックスの極意 質の実績を確保する戦略

井上伸一郎(PORTRAIT IMAGE : 2024HIKITA CHISATO)

海外の関係者とのパイプを

日本の映像コンテンツの視聴層は世界的に拡大している。結果、原作のマンガが海外でも読まれる、という現象も生まれた。日本の映像コンテンツはこれまでも一部のコア層には評価されてきたが、ここにきてその裾野が一気に広がった。ようやく世界が日本コンテンツの魅力に気がついたのだ。これもまたデジタルシフトがもたらした現象だ。

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興行収入や視聴者数という「数の実績」を獲得した今、次になすべきは日本コンテンツの「質の実績」を残すことだ。そのためには賞(を得る=アワード)という勲章や、国内外のしっかりとした研究者による評論の多言語化が必要だ。「質の実績」は記録として残り続ける。それはやがて永続的な評価となる。 

「数の実績」を残した今でも、日本と海外のコンテンツ関係者のパイプが太くなったとは言い難い。パイプを太く、数多くもてば、それだけ「質の実績」を残すチャンスは広がってゆく。現在は個人の努力によるところが多いが、組織・団体、ひいては国家レベルでの支援が求められる。

2025年12月12日から17日に開催された「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)では、アニメ界のアカデミー賞と呼ばれる北米のアニー賞とのコラボレーションがあった。同映画祭にはアニメ界における多様性と公平性の向上を目標に掲げる団体「ウーマン・イン・アニメーション」会長も来日した。こうした交流が日常的になれば、日本の映像文化の発信力が強まるはずだ。

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日本のコンテンツが世界で愛され続けるためには、「数」と「質」の実績を確保し続ける努力を業界全体で行うべきだと考える。


井上伸一郎◎1959年、東京都生まれ。雑誌、文芸、マンガの編集、アニメ・実写映画のプロデュースを行う。2007年から角川書店代表取締役社長、19年からKADOKAWA代表取締役副社長を務めた。現在、ENJYU代表社員。ZEN大学客員教授、コンテンツ産業史アーカイブ研究センター副所長、著書に『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史(』星海社新書)

イラストレーション=ベルンド・シッファーデッカー

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