国家を超越した巨大プラットフォーム企業が台頭する世界をどう読み解くべきか。デジタル経済研究の第一人者であるヴィリ・レードンヴィルタが、経済と制度の視点から「クラウド帝国」の現在地と未来を語るインタビュー、後編をお届けする(前編はこちら)。
——日本市場では、Amazonに対する公正取引委員会の介入や追徴課税、eBayの撤退、ヤフオクからメルカリへのシェア移動など、独自の競争ダイナミクスと国家介入が観察されてきた。これらの事例は、市場競争と国家規制が一定程度機能していることを示しているようにも見える。こうした日本の経験は、「クラウド帝国」という理論枠組みの中で、どのように位置づけることができるのだろうか?
私は、AmazonやGoogleに対する日本政府の独占禁止法措置を、EUがクラウド帝国の過剰な支配に対して行っている対応と同じく「ダブルムーブメント〔カール・ポランニーが言うところの、市場の拡張とそれに対する社会的・制度的な反動が同時に生じる過程〕」の一環としてとらえている。また、日本の「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」は、一定規模以上のプラットフォームを対象とする点で、EUのデジタル市場法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)と極めて近い発想に基づいている。この意味で、日本が特別に異なる道を歩んできたとは言いにくい。むしろ、日本と欧州は多くの点で共通のジレンマを抱えている。米国のテック企業なしでは経済や行政が成り立たない一方で、それらに全面的に依存することも望ましくない。かといって、中国のテック企業はさらに扱いづらい存在である、という立場だ。
一方、ヤフオクやメルカリは、本質的には日本国内で完結する取引を対象とした「国内型ECマーケットプレイス」である。「Yahoo! Auctions」という名称はグローバルな印象を与えるが、実際には日本と台湾以外ではほとんど認知されていない。他国にも同様の国内向けプラットフォームは存在する(フィンランドの「Tori」などがその例だ)。
しかし、これらはクラウド帝国とは競争の次元が異なる。クラウド帝国が形成するのは、取引の8〜9割が国境を越えるグローバル市場であり、規模も性質も根本的に別物なのである。



