組織はなぜ厄介者を黙らせるのか
組織が厄介な社員を黙らせてしまうのにはそれなりの理由がある。異議は会議を遅らせる。異議は嫌な空気を生む。だからリーダーは意見を戦わせることよりも、スムーズな進行を望む。1人の声が流れを乱すとき、その人を黙らせる方が、会社のシステムを見直すことよりも効率的に感じられるのだ。
そこには権力的な力学も関係している。本人にそのつもりがなくとも、反論はしばしば上司への挑戦となる。これまで上司が信じてきた前提が問い直されることになるからだ。そのためリーダーは問題そのものではなく、その人物を問題視することで現状を守ろうとする。
心理学的にも、集団は調和を好む。集団力学の研究によると、異議の多くは「貢献」ではなく「反抗的」と見なされるという。それは特に、反論が感情的であったり繰り返されたりする場合に顕著だ。その人の口調や態度が、問題の本質を避ける口実になってしまうのだ。
皮肉なことに、企業はそこで真実を語る口を失う。実際、同じ問題を繰り返し指摘する社員は、現場でそのシステムの問題に直面していることが多い。こうした人々が黙らされたり排除されたりすると問題は水面下に潜り、やがて社員のモチベーションの低下、離職、あるいは突発的なトラブルとして表面化する。
賢いリーダーは「シグナル」を見抜く
リーダーに必要なのは、「シグナルとスタイルを区別する」思考法だ。もちろんすべての反論が正しいわけではないし、すべての不快なやりとり(スタイル)を許容すべきでもない。しかし同じ問題提起や異論(シグナル)が繰り返されているなら、それは無視ではなく分析に値する。
重要なのは、パターンを見極めることだ。同じ懸念が別の会話や場面でも、よくあるパターンとして繰り返し現れているだろうか? もしそうであれば、その問題はシステム的なものである可能性が高い。次は「引き算」の視点で考えてみよう。厄介な人物がそこにいなくなったら、問題は解消されるだろうか。それとも、一時的に消えても、やがて別の形で再び現れるのだろうか。
あなたが上司なら、「反論の意義」を再定義してみるのもいいだろう。問題を提起する部下を黙らせるのではなく、その人物に「この問題の解決を難しくしているのは何か」と尋ねてみるのだ。すると焦点は、その人物の性格から問題そのものへと移る。
反論を自由に述べられる公式な窓口を作るのも有効な手だ。こうした窓口があれば社員のストレスは低下する。組織が耳を傾け、対応できることを示すことで、「厄介な部下」の行動は穏やかになっていく。
最後に、リーダーは部下の反論を反抗と捉えるのではなく、むしろ興味を持って受け止めるべきだ。リーダーが「あなたの懸念を理解したいので、もう少し詳しく教えてください」と言えば、部下は自分の意見が「情報」として歓迎されていると感じ、緊張がやわらぐ。その姿勢はあなたの権威を弱めるものではない。むしろ組織全体の学びを強化することにつながる。
組織内の「もっとも厄介な人物」が、付き合いやすい人物であることは稀だ。しかし彼らの多くは他の人が言えないことを伝えてくれている。リーダーがそのメッセージを解読できたなら、他社が見逃す洞察を手に入れられる。こうした声を無視する企業は、どれほど会議がスムーズに進もうと、その快適さの代償を後で支払うことになるだろう。


