政治

2026.02.01 08:00

米露最後の核軍縮条約「新START」が失効へ

ロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)「トポリM」(Getty Images)

ロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)「トポリM」(Getty Images)

米国とロシアの核兵器保有数を制限する最後の条約である「新戦略兵器削減条約(新START)」が2月4日に履行期限を迎える。同条約が失効すれば、新たな核軍拡競争が勃発し、北半球全体に波及する恐れがある。

2010年に調印された新STARTは、米露にそれぞれ1550発の核弾頭の凍結を義務付ける、現存する唯一の合意だ。同条約発効以降、両国は2500基以上の中距離核ミサイルを廃棄し、核兵器保有量を第一次核軍拡競争初期の水準まで削減した。

筆者の取材に応じた米国家安全保障会議(NSC)のスティーブン・パイファー元理事は、2月5日に新STARTが失効し、新たな条約が締結されない場合、核弾頭備蓄に向けた新たな競争が勃発する可能性があると警告した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、新STARTを2027年初頭まで延長することを提案したが、条件が付いていた。これについて、パイファー元理事は次のように指摘する。「ロシアが新STARTの数値制限の監視を1年間延長する提案は、米露が今後の対応を協議する余地を生み出す可能性があるが、ロシア側は条約の検証措置の継続を提案していない。したがって、両陣営が実際に制限を順守しているという確信は弱まるだろう」

プーチン大統領は3年前、ロシアの新STARTへの参加を停止した際、条約の順守を検証するための相互査察も停止した。米有数の軍縮シンクタンクである核脅威イニシアチブ(NTI)によると、年間最大10回行われるこうした現地査察の際、米国の専門家がロシアのミサイル倉庫や潜水艦を間近で調査し、各ミサイルに搭載されている再突入体や弾頭の数を物理的に数える可能性があるという。だが、ロシアが条約で義務付けられた査察を阻止していることは、同国が既に地下倉庫に隠された大陸間弾道ミサイル(ICBM)や、海中に潜航して海を渡る潜水艦に、許容量を超える核弾頭を密かに搭載し始めている可能性があることを示唆している。実際、米国務省は2025年1月、ロシアが配備済み戦略核弾頭の数で、新STARTの制限をわずかに超過した可能性があるとの見解を示した。

パイファー元理事は、米露両国の弾道ミサイルの大半は、複数の独立目標誘導再突入体を搭載可能で、ミサイルの種類に応じて1基当たり1~10発の核弾頭が配備されていると説明した。新STARTは各ミサイルに搭載できる弾頭数を制限しているが、プーチン大統領による条約の査察活動の一方的凍結により、米国側は条約の順守を確認する手段を全く持っていない。この条約の巨大な穴のせいで、米国側には協定を延長する動機がない。

パイファー元理事は次のように説明した。「核保有競合国が既に進めている軍拡に追いつくという課題を踏まえると、新STARTで定められた配備済み戦略核弾頭の上限は制約が厳しすぎるとの見解が米国防総省内で定着しつつあるようだ。米国が新STARTの制限値を超えた場合、ロシアはほぼ間違いなく対抗措置を取るだろう。人々が1960年代の教訓を思い出す前に事態が悪化しないことを願う。もし自国が核兵器を増強していて相手側も同じことをしている場合、自らの安全保障を実質的に向上させることは恐らく不可能だからだ。その教訓が、60年代末に米露が戦略兵器削減に向けた交渉を開始するきっかけとなったのだ」

米軍備管理協会(ACA)の2025年の報告書「核兵器保有国一覧」には、「米科学者連盟(FAS)の推計によれば、2024年3月時点でロシアの軍事備蓄核弾頭は約4380発で、さらに1200発の退役弾頭が解体待ちの状態にある」と記されている。

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翻訳・編集=安藤清香

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