経済・社会

2026.02.10 14:15

なぜ、過疎地域・飛騨に大学をつくるのか?|宮田裕章の「辺境」未来論 第1回

2026年4月、岐阜県・飛騨高山に新しい大学が誕生する。地域共創を掲げる「Co-Innovation University (略称:ColU、コーアイユー)」だ。その学長候補が、医療分野を専門とするデータサイエンティストであり、2025年の大阪・関西万博でシグネチャーパビリオンのプロデュースも務めた宮田裕章だ。

今回から始まるForbes JAPANの新連載『宮田裕章の「辺境」未来論──Resonant Regions』では、宮田がなぜ「過疎地域」とされる飛騨に大学をつくろうとしたのか、その背景や思想を紐解きながら、「辺境」から始まる未来論について語っていく。


なぜ、未来はしばしば「辺境」から立ち上がるのだろうか。

ここでいう辺境とは、単に地理的な周縁を意味しない。20世紀型の標準化されたシステムや、強固な経済合理性の流れに完全には回収されず、問いと実験の余白が残された場所のことだ。そうした辺境は、地方に限らず、都市の内部──高層ビルの足元や路地裏──にも静かに存在している。

私が飛騨という過疎地域を拠点に、Co-Innovation University(CoIU)という新しい大学を立ち上げた理由も、まさにこの「辺境性」にある。

日本の多くの大学は長らく、人口集積地に立地し、均質化された教育モデルを前提に運営されてきた。しかし少子高齢化が進み、生成AIが登場するなど社会の前提そのものが崩れつつある現在、大学が果たすべき役割は大きく変わり始めている。

正解(知識)を教える場所から、まだ見ぬ問いを立て、社会と共に新たな価値を創る(Co-Innovation)場へ。

そう考えたとき、既存の制度や慣習が強く作用する「中心」よりも、むしろ辺境の方が、新しい社会OSを実装するのに適しているのではないか、という直感があった。

飛騨は人口減少などの課題先進地である。そこには確かに、都市部にはない不便さや、維持困難なインフラといった厳しい現実がある。だが、既存のシステムでは解決できないその「足りなさ」があるからこそ、未来に向かうための切実な問いが生まれるのだ。

同時にここには、豊かな森林資源や匠の技、日本の原風景や伝統を軸にした観光体験、さらには宇宙の謎を捉える最先端科学までもが同居している。ここには、GDPや効率性といった単一の物差しだけでは測れない価値が、地層のように折り重なっている。その環境は、大学を社会と断絶した「キャンパス」に閉じ込めるのではなく、地域そのものを学びの場とする挑戦を可能にする。

次ページ > 学生が地域に入り込み、そこに暮らす人々や企業、自治体と共に問いを立てる

文=宮田裕章

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