経済・社会

2026.02.10 14:15

なぜ、過疎地域・飛騨に大学をつくるのか?|宮田裕章の「辺境」未来論 第1回

CoIUでは、学生が地域に入り込み、そこに暮らす人々や企業、自治体と共に問いを立てる。それは、地域を単なる「実験場」として消費するのとは違う。地域の人々が抱える課題や願いに寄り添い、共に汗をかきながら未来をつくるプロセスそのものを学ぶのだ。そこでは、あらかじめ用意された正解などない。むしろ、何が問題なのかを定義し、多様な解があり得ることを受け入れるところから始めなければならない。その不確実さの中で未来を切り拓く力こそが、これからの時代に必要な学びだと考えている。

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かつて辺境は孤立していた。しかし今は、デジタルテクノロジーによって辺境同士が『中心』を経由せずに直接つながり、グローバルな共鳴を起こせるようになった。データやテクノロジーは、人々を管理するためではなく、距離を超えて「共感」や「問い」をつなぐためにこそある。だからこそ、辺境はもはや周縁ではなく、最先端の共創の場になり得るのだ。

そして重要なのは、こうした試みが飛騨という一地域に閉じたものではないという点だ。直島での文化実践、前橋や小布施での創造的な挑戦、都市の内部に生まれる新しいコミュニティ。それぞれは独立した辺境のように見えながら、実際には価値観や問いのレベルで深く響き合っている。私はこの現象を「Resonant Regions(共鳴する地域)」と呼びたい。

これからの未来は、一つの中心からトップダウンで設計されるものではない。異なる個性を持つ辺境同士が直接共鳴し合い、時には「中心」をも巻き込みながら、多声的(ポリフォニック)な社会像が同時に立ち上がっていく。飛騨に大学をつくるという選択も、その共鳴の一端に過ぎない。

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本連載では、こうした辺境の特異点を訪ね歩きながら、人・文化・制度・美意識がどのように交差し、未来が編まれていくのかを描いていく。だが、辺境は決して物理的な遠隔地だけの話ではない。管理された日常の綻び、効率化の波に抗う小さな違和感、あるいは合理性の外側にある熱狂。そうした「中心」から外れた場所にこそ、次の時代を切り拓く可能性が眠っているはずだ。

あなたの身近にある『辺境』はどこだろうか。その問いと共に、この旅を始めたい。

文=宮田裕章

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