経済・社会

2026.02.03 16:15

国家を超えた「クラウド帝国」の世界地図の現在、未来はどうなるのか?(前編)

ヴィリ・レードンヴィルタ(ジョエル・キンメル=イラストレーション (C)MIKKO RASKINEN)

ヴィリ・レードンヴィルタ(ジョエル・キンメル=イラストレーション (C)MIKKO RASKINEN)

国家を超越した巨大プラットフォーム企業が台頭する世界をどう読み解くべきか。デジタル経済研究の第一人者であるヴィリ・レードンヴィルタが、経済と制度の視点から「クラウド帝国」の現在地と未来を語る。

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——教授の近著『デジタルの皇帝たち』や最新研究は、デジタルプラットフォームが国家に匹敵する統治機能を担い始めているという問題意識を主題としている。そもそも「クラウド帝国」という概念を提唱するに至った背景は? それは従来の資本主義や国家主権の理解とどのように異なるか?また、ヤニス・バルファキスの「テクノ封建制」の議論と比較したとき、自身の立場をどのように位置づけているのか?

ヤニスとは、彼がまだ経済学の教授をしていた頃からの知り合いだ。私たちは大手テック企業が経済や社会に及ぼす影響力について論じているが、それぞれ視点が異なる。ヤニスの「テクノ封建制」は、テック企業が自社のプラットフォームに依存するすべての人々から超過利潤を搾取する構造に着目している。歴史的な社会秩序としての封建制は、相互の依存と義務に基づく階層的な関係によって成り立ち、人々それぞれの社会的な位置づけを規定する仕組みであった。

私の比喩はそれよりも後の時代、すなわち近世黎明期になぞらえたものだ。近世国家は単に富を収奪する存在ではなかった。司法制度の整備など、経済成長を可能にする制度へ投資することで、そもそも「収奪可能な富」が生まれる条件を整えていた。私はこの点に着目し、デジタルプラットフォームが契約の履行や詐欺の取り締まりを通じて、利用者間の水平的な関係を成立させる点を強調する。ヤニスが「搾取」に焦点を当てるのに対し、私は「成長を可能にする仕組み」に注目している。

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もっとも、私の理論も搾取の側面を排除するものではない。近世国家は、現代の民主国家のように市民への説明責任を負っておらず、主権者は王権特権を用いて事業を没収したり、恣意的な課徴金を課したりすることができた。

こうした理論を構築した理由は、インターネット経済が、巨大組織を不要にし、市場が自律的に機能するようにするという当初の理想とは裏腹に、なぜ少数の企業によって支配されるに至ったのかを説明するためである。インターネットは「仲介者を排除する」技術であるはずだったが、結果として人類史上最大の仲介者を生み出した。

結局のところ、インターネット経済もこれまでの時代と同様に、成長のためには安全と秩序を提供する何らかの権威を必要としたということである。初期のアナーキーなインターネット経済は、参加者同士が互いを把握できるほど小規模であった時代にのみ機能していた。

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井村凪伯(経済学101)=インタビュー・文

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