経済・社会

2026.02.03 16:15

国家を超えた「クラウド帝国」の世界地図の現在、未来はどうなるのか?(前編)

ヴィリ・レードンヴィルタ(ジョエル・キンメル=イラストレーション (C)MIKKO RASKINEN)

——現在、米中の「クラウド帝国」が形成する二極構造は、世界の地政学的分断と強く結びついているように見える。このデジタルな二極構造は、冷戦期のような過去の二極体制と比べて、どのような点で性質が異なるか? また、経済と安全保障を横断的にとらえる「地経学(geoeconomics)」という分析枠組みについて、どの程度問題意識や方法論を共有していると考えるか?

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 『デジタルの皇帝たち』の終章では、支配的なプラットフォームが国家からの相対的独立性を失い、自国政府の地政学的道具となる危険性について簡潔に論じた。

現在の研究では、この問題をさらに掘り下げ、分析対象をデジタルプラットフォームにとどめず、クラウド・データセンターや海底光ファイバーケーブルといった、デジタル経済を物理的に支えるインフラの水準にまで広げている。これらの物理インフラは、プラットフォームと垂直統合され、米中のごく少数の巨大テック企業によって所有・支配されつつある。そして、ルールに基づく国際秩序は明らかにほころびを見せつつあり、とりわけ自らを「大国」と認識する国家は、経済的・技術的な相互依存関係を、安全保障や外交目的のために利用しようとする動きを強めている。

このような国家の実践は、エドワード・ルトワックが1990年代に「商業の文法における紛争の論理」として定義した意味での「地経学(geoeconomics)」と呼ぶことができる。

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実際、学術界でも地経学は、国際貿易と安全保障の交差領域を指す分析枠組みとして定着しつつある。私自身も、自分の研究グループの一部の研究を指す際にこの用語を用いている。ただし、多くの地経学研究が国家を主たる行為主体とみなすのに対し、私たちは巨大テック企業もまた、国際政治のアクターになり得る存在だと考えている。

また、リアリズム的アプローチがしばしば国家を「安全保障や権力を最大化しようとする単一の意思主体」と仮定するのに対し、私たちは政治経済学的な視点から、国家の政策が国内の多様な利害集団の力学によって形成されている点にも注目している。

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井村凪伯(経済学101)=インタビュー・文

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