経済・社会

2026.02.03 16:15

国家を超えた「クラウド帝国」の世界地図の現在、未来はどうなるのか?(前編)

ヴィリ・レードンヴィルタ(ジョエル・キンメル=イラストレーション (C)MIKKO RASKINEN)

——教授のクラウド帝国に対する問題意識は、巨大テック企業の支配力を擁護する一部の経済学者の見解とは対照的である。たとえばタイラー・コーエンは、過去の事例を引きながら「独占は本質的に一時的なものだ」として、巨大テック企業による市場支配を擁護している。こうした議論はクラウド帝国の現実をとらえるうえでどの点に問題があると考えるか?

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この議論にはいくつか問題がある。第一に、仮にコーエンの主張が正しく、独占が一時的なものであるとしても、自ら築いたビジネスから締め出されたAmazonの販売者や、収益の30%をAppleやGoogleに徴収されるアプリ開発者、貧困に苦しむギグワーカーたちにとって、それが何の救いになるのだろうか。独占企業が次々に交代していくとしても、その経済は依然として「独占経済」であり、競争市場とは言えない。独裁者が次々に交代するとしても、その社会が独裁体制であることに変わりはないのと同じである。

また、「一時的」とは一体どの程度の期間を指すのだろうかという問題もある。AppleとGoogleはモバイルアプリのエコシステムをほぼ20年にわたって支配してきた。現在活動しているアプリ開発者の多くは、そのキャリアのすべてをこの二社の寡占体制の下で過ごしている。それでもなお、この状況を「一時的な独占」と呼べるだろうか。

2008年以前は、各市場で主導的地位に立つテック企業が2、3年ごとに入れ替わっていた。しかし2008年以降、私たちの生活は特定の企業への依存を急速に深め、その地位を覆すことが極めて難しくなった。彼らは、将来の脅威をいち早く察知し、現在の支配力を使って未来そのものを取り込む術に長けている。AI分野を見ても、先頭に立っているのはGoogle DeepMind、Meta、Amazonと提携するAnthropic、Microsoftと提携するOpenAIであり、既存の巨大企業圏がそのまま次の技術潮流を支配している。

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井村凪伯(経済学101)=インタビュー・文

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