経済・社会

2026.02.02 14:15

『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』著者に聞く、2026年の世界と日本

ピーター・ターチン(ジョエル・キンメル=イラストレーション)

——あなたの理論は、農業国家を理論化したもので、さらに『不和の時代』等で、理論が近代工業化国家にも適用可能であることを明らかにしている。この理論は、工業化社会以降、例えばポスト工業化社会(サービス業の比重が大きい国家)や、日本のような高齢化社会にも適用できるのか? 日本について分析した論文では、「高齢化は暴力事件数を低下させる」と指摘している。これからどの先進国も高齢化に向かう。高齢化という現象は人類史においてこれまでなかった現象であり、あなたの理論を決定的に修正させるのだろうか? 

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他には、財政についてだと、最近話題のMMT(現代貨幣理論)では、政府部門は赤字であることが基本・通常であると指摘している(例えば、増額する財政赤字に対応して「小さな政府」を志向したとされているレーガン政権だが、結果的には財政赤字を増やしており、GDPに占める政府部門の規模も減少させていない)。主流派経済学でも政府部門の赤字を擁護する見解が増えてきている。今の先進国において財政破綻は起こり得ないとするなら、あなたの理論で指摘されている財政による社会不安定化要因は、先進国ではもう機能していないのだろうか?

多くの問題を提起しているが、高齢化の影響だけに焦点を絞らせてほしい。

たしかに、過去の構造・人口動態危機では通常、ユースバルジ(若年層膨張)を伴っていたため、大衆の窮乏化の進行、エリート過剰生産、国家財政危機と、若年層縮小の組み合わせは、これまでにないものだ。つまり、従来までの不安定性を増大させる要因の組み合わせに、低下させる別の要因が追加されているわけだ。この過去にない組み合わせの結果がどうなるのかは、観察を必要としている。判明を待つべきだろう。

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ただし、私の理論から日本の将来については、一つの仮説が導かれる。日本では構造的トレンドから、近い将来に革命が起こる可能性があるが、高齢化の影響からフランス革命や明治維新と比較して(犠牲者の点で)暴力的でないものになるだろう、というものだ。繰り返すが、これは仮説であり、まだ解決すべき研究課題は残っている。

PETER TURCHIN◎1957年生まれ。数理生態学・歴史学者。コネチカット大学名誉教授、オーストリア・ウィーンの研究機関『複雑系科学ハブ』プロジェクト・リーダー。複雑系科学を歴史に応用した歴史動力学(クリオダイナミクス)の提唱者。著書に『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』(早川書房、濱野大道訳)。

青野浩(経済学101)=インタビュー・文

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