デジタル後進国だからこそ
そして今、パランティアの急成長を支えているのが生成AIだ。同社は既存のプラットフォームに大規模言語モデル(LLM)を導入したサービス「AIP」を23年から提供開始した。
「私はファウンドリーのことを、その威力から『モンスターマシン』と呼んでいるのですが、モンスターだけに扱いづらいところもありました。AIPはこのモンスターを乗りこなす猛獣使いのようなもので、エンジニアと、データ解析スキルのない一般と楢崎は力説する。例えば、カナダの建設会社は、AIPを会社全体のオペレーティングシステムとすることで、従業員管理、顧客対応、財務など従来分断されていた業務をシームレスに運用できるようになった。
PTJは、このAIPを武器にSOMPO以外の顧客にもプラットフォームを普及させようともくろむ。
SOMPOの執行役専務を兼務していた楢崎は25年10月、PTJ専任の大原克之にCEOを託した。大原は楢崎とともに、桜田をカープに引き合わせた人物でもある。「LLMの登場はテック業界だけでなくビジネス業界全体にとてつもないインパクトを与えています。AIPを起爆剤に、日本の産業をより進化させていきたいと思っています」と、大原は意気込む。
日本のDX化が進まないのは「IT人材の不足」「レガシーシステムの維持」「古い企業文化や風土」などが原因といわれる。だが、パランティアの米本社でグローバル事業開発責任者を務めるケビン・カワサキは「それらはまったく問題にならない」と話す。「かつては世界最高のエンジニアが何カ月もかけていたデータコードの統合・解析が、生成AIによって今なら自然な言葉を入力するだけで簡単にできるようになりました。つまり、従来の業務に優れている人が、再教育を受けずともテクノロジーを活用し、アウトプットの品質やスピードを飛躍的に高めることが可能になったのです。だから、日本企業の素晴らしい文化まで変革する必要はないのです」。
楢崎は「今後は生成AIの使い方によって企業の浮沈が決まる」と断言する。「日本はデジタル後進国だからこそ、段階的なプロセスを飛び越えて、リープフロッグ(カエル跳び)で一気に発展する可能性を秘めています。経営者が生成AIの『ガチな使い方』にかじを切れるかどうかで、企業の将来が決まると考えています」。
楢崎浩一◎1981年、三菱商事入社。2016年SOMPOホールディングスCDOに就任。パランティア・テクノロジーズ・ジャパンCEOを経て、25年10月からSOMPOの執行役専務として事業開発をリード。
大原克之◎1994年、安田火災海上保険入社。SOMPOのシリコンバレー拠点長などを経て、2020年よりパランティア・テクノロジーズ・ジャパンに従事し、22年に転籍。25年10月から同社CEOに就任。
ケビン・カワサキ◎2011年からパランティア・テクノロジーズの経営メンバーを務める。20年の上場、22年の黒字化、24年のS&P500への採用を主導。パランティアのグローバルな事業開発を推進している。


