インパクト測定は、意思決定の質を上げるためにある
インパクト投資における重要性(マテリアリティ)の決定は、権力関係、価値観、世界観が交差する社会的プロセスである。だからこそ、測定は「正しい指標探し」になりがちだが、それだけでは前に進まない。重要なのは、投資家と起業家が受益者を中心として「何を重要とみなすか」を共同で更新し続ける対話の設計である。
インパクト測定は、投資家の説明責任のためだけにあるのではない。起業家の学習と改善を促し、受益者にとって意味のある変化を実現し、結果として長期的にインパクトを最大化するためにある。そのために必要なのは、より精緻な技術だけではない。誰の声を、どの意思決定に、どのように反映させるのかを明示的に組み込んだ対話の設計である。
参考文献
Lehner, O. M., Nicholls, A., & Kapplmüller, S. B. (2022). Arenas of Contestation: A Senian Social Justice Perspective on the Nature of Materiality in Impact Measurement. Journal of Business Ethics, 179, 971–989.
五十嵐剛志◎KIBOW 社会投資ファンド インベストメント・プロフェッショナル。慶應義塾大学経済学部卒業、英国オックスフォード大学経営学修士(MBA)。 PwCあらた有限責任監査法人、内閣府、米国ハーバードビジネススクールImpact-weighted Accounts Initiative、英国政府系インパクト投資ファンドBig Society Capitalを経て現職。社会課題解決のためのファイナンスに関する調査、研修、政策企画に従事。Accountability for Change創設者。元Teach For Japan最高財務責任者。インパクトスタートアップ協会監事。公認会計士。


