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2026.01.30 08:45

「成功」の定義を問い直す━━。インパクトスタートアップが抱える知られざるジレンマ

rookielion - stock.adobe.com

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現在発売中のForbes JAPAN1月23日発売号の第二特集は、「新たな豊かさ」を生み出し、持続可能な経済成長の新主役とも言える「インパクト・エコノミー」をテーマにした「IMPACT THE NEW CHAPTER Vo.2」。今回、フォーカスするのは、社会課題の解決を成長のエンジンととらえ、持続可能な社会の実現を目指す「インパクトスタートアップ」だ。インパクトスタートアップの「1年間の経営におけるチャレンジ」を表彰する「インパクト・チャレンジ・オブ・イヤー」という新企画を中心に、金融・資本市場、大企業、スタートアップ、官、地域で拡張し、「新章」を歩みはじめた日本のインパクト・エコノミーの新潮流を読み解いていく。

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今回、WEBオリジナル記事として、インパクト投資家でありインパクト投資における有識者のひとりである、KIBOW社会投資ファンド インベストメント・プロフェッショナルの五十嵐剛志氏のnote「五十嵐剛志『留学/海外就職/インパクト投資』」に掲載された記事を、本人による再編集のうえ、Forbes JAPANに転載する。


成功の裏に潜む「ミッション・ドリフト」

社会課題の解決と持続可能な成長の両立を目指す「インパクトスタートアップ」は世界的に増加している。しかしその一方で、成長の過程において当初掲げた社会的使命を十分に維持できず、葛藤を抱える企業も少なくない。この現象は「ミッション・ドリフト」と呼ばれ、社会性と事業性の両立を目指すうえで重大な課題のひとつだ。

この問題を体系的に分析したのが、米国の法学研究者エミリー・アギーレ准教授による論文 “The Hidden Cost of Venture Capital”(2025)である。本稿は同論文に基づき、ミッション・ドリフトの原因が、創業者のコミットメントの欠如ではなく、スタートアップ・エコシステムの中核をなす「ベンチャーキャピタル(VC)」という資金調達モデルそのものに深く組み込まれていることを明らかにする。

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問題は「初期」から発生している

これまでミッション・ドリフトは、IPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)時など、主に企業の「後期段階」で起こる問題として説明されてきた。しかし論文は、こうした通説が本質を捉えていないと指摘する。

重要なのは、「初期段階」におけるベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達である。創業初期の意思決定は、後から修正することが極めて難しく、企業の進む道を長期にわたって規定する。ミッション・ドリフトの真因は、まさにこの初期段階に潜んでいる。

次ページ > VCモデルに組み込まれた「急成長とEXITへの圧力」

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