サイエンス

2026.02.01 18:00

人間の顔を識別して「記憶する魚」、テッポウウオの秘密を探る

テッポウウオ(Shutterstock.com)

知能を理解する上で、テッポウウオが重要なのはなぜか

生物学者はかつて、個々の顔を識別するといった能力は、極めて高度に発達した脳を持つ動物だけのものだと考えていた。しかしこの見方は、主に人間を対象とした神経生物学に根差したものであり、そこでは魚などの動物を、知能の序列の最下位に位置付けていた。テッポウウオを使ったこの実験は、この前提を覆している。

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だからといって、魚が私たちとまったく同じ方法で顔を認識できるとか、魚が「人間と同じくらい」賢いという意味ではない。これが示唆するのはむしろ、認知力は驚くような形で現れる可能性があるし、人間とは大きく異なる神経の仕組みを持っていることもあり得る、ということだ。

テッポウウオには、自然界で人間の顔を認識できるよう進化すべき理由がない。従って今回の研究結果は、この能力は生まれ持ったものというより、学習能力に由来する可能性があることも示唆している。このことは、学習や記憶といった能力は、大型の脳にとどまらず、あらゆる大きさの脳に共通する基本的な機能である可能性を裏付けるものだ。

こうした前例のない発見を受けて、生物学者はテッポウウオという魚について、新たな問いを投げかけるようになった。

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・テッポウウオは、餌という報酬がなくても、個々の人間を識別するのか。
・テッポウウオは、画像ではなく本物の3次元の人間の顔も識別できるのか。
・テッポウウオ以外の魚も、同等かそれ以上に高度な認識能力を持っているのか(特に、複雑な社会生活を営む魚の場合)。

野生の魚に関するフィールド研究では、魚がダイバーを識別している兆候がすでに見られている。それを考えると、魚が個々の人間を本当に識別していることを示す現実のエビデンスによって、研究室で得られた結果が裏付けられる日もそう遠くないと言えそうだ。

テッポウウオは、正確に狙いを定めて水を噴出するその能力で、すでに私たちを魅了してきた。そして今では科学者たちに、「謙虚であれ」という教訓を与える存在でもある。たとえ脳が小さくても、「より高等な」動物にしかできないと考えられてきた複雑な視覚的タスクをやってのけられることを、私たちに認めさせたからだ。

テッポウウオは私たちに、自然界における知能の真のありかたを見直すよう迫っている。口から水を吹き出す魚が私たち人間を識別できるのだとしたら、知能とは、私たちが想像してきた以上に、ずっと流動的で多様なのかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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