最近になって、道路や橋、トンネルといったインフラ構造物を「長寿命化」する動きが出てきた。インフラ施設を、当初の建設費だけでなく、将来にかかる維持・改修費を含めたライフサイクルコストで費用対効果を見る手法が浸透している。だが、どうやらそれとは異なる別の思惑もあるようだ。
というのは、日本では今後、長期にわたって労働者人口が減少する。すると仮に、将来に十分な財源が確保できても、維持・改修工事を担う作業員が足りなくなる。工事自体を減らさなければ、インフラの維持が難しくなるという問題に直面しているのだ。
世界最高の「CTスキャン」
このような状況下で、インフラを整備・保守する自治体などから注目を集めているのが、兵庫県の佐用町にある大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」だ。
直径が500メートルという巨大な円形の施設で、電子を光速近くまで加速させた電子ビームをつくる。このビームを磁石で曲げると「放射光」と呼ばれる強力な電磁波が発生。その電磁波を物体に当てた跳ね返りで画像を撮影する。
一般的なX線装置の10億倍の強さの電磁波なので、分子や原子が見えるナノレベルの解像度を持つ世界最高の「CTスキャン(コンピュータ断層撮影装置)」とも言える。
これまでに新薬開発や新素材開発といった生命科学や物質科学の分野、さらに産業応用にまで貢献が見られる。
また、風変わりなところでは、「日本刀」がよく切れる理由も解き明かす。日本刀は高温に加熱した後に水で急冷する「焼入れ」が切れ味につながるとされてきたが、そのメカニズムは不明だった。
そこで、日本刀の断面や内部の結晶構造をSPring-8で画像化。すると、鉄鋼に含まれる炭素の原子が外に出ないよう閉じ込められ「マルテンサイト」という、鉄鋼の中で最も硬い結晶組織に変化しているのが見てとれた。
この変化の過程が切れ味にどのような影響を与えるかの解析もできる。このように、従来の科学で分析できなかった「謎」の解明にもSPring-8は役立ってきた。



