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2026.01.30 14:15

世界最高のCTスキャン「SPring-8」で道路を解析 神戸市で舗装の寿命を2倍超へ

長寿命化を目指した新材料による道路舗装

アスファルト老朽化の理由

これを道路の舗装の際に使えないかと考えたのが、神戸市の外郭団体「神戸市道路公社」だ。同公社は神戸市内で約30キロメートルの道路を管理しているのだが、六甲山上と市街地を結ぶ道路などもあり、舗装が傷むとスリップ事故につながるので、老朽化対策に頭を悩ませてきた。

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そこで、コンクリートや地盤などのインフラ材料の解析にSPring-8を活用していた京都大学経営管理大学院の関連機関「インフラ物性研究機構」に声をかけた。両者は神戸市道路公社が管理する道路のアスファルト舗装をSPring-8で観察する共同研究をすることで合意。2025年10月に連携協定を締結した。

神戸市内の道路を視察するインフラ物性研究機構の職員
神戸市内の道路を視察するインフラ物性研究機構の職員

そもそもアスファルト舗装は、石油由来のアスファルトに添加剤を加えるなどした「アスファルトバインダー」で、「骨材」と呼ばれる砂や砂利を結合・接着している。

アスファルトバインダーは熱すると柔らかくなり、常温だと固まる性質を持つ。高温で施工して寒い時期なら30分、暑いときでも4時間ほどで、表面温度が摂氏50度以下となり、車が通行できるので道路の材料としては向いている。仮にコンクリート製の道路だと、車が通れるまで固まるには2週間ほどかかるからだ。

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アスファルト舗装は土木工学的にはアスファルトバインダーと骨材が均一に混ざっていると考えられていた。だが、科学の目で見るとそうではない。骨材の凹凸にアスファルトバインダーが入り込んで機械的に結合するとともに、骨材とアスファルトの分子同士が引きあう力で結合する。

ところが、骨材と分子間で引き合う力ではアスファルトバインダーより水のほうが強い。すると水が入ると、アスファルトバインダーと骨材は剥離してしまう。そこでインフラ物性研究機構は、SPring-8での解析により骨材とアスファルトバインダーの引き合う力を大幅に強化し、耐久性が向上するアスファルト舗装を提案したのだ。

SPring-8を使ってアスファルト舗装の断層画像を見ると、骨材とアスファルトバインダーの間などに空気が入った隙間があちこちに存在することがわかる。アスファルト舗装は年月を重ねると水が浸入して、次第に壊れていくのだ。

SPring-8と産業用X線の画像比較(提供:京都大学経営管理大学院特定教授 瀬尾彰)
SPring-8と産業用X線の画像比較(提供:京都大学経営管理大学院特定教授 瀬尾彰)

もっとも、隙間の有無くらいであれば、産業用の「X線CT」でもある程度把握できるのだが、SPring-8はその解像度がけた外れに高いので、数千回の車両走行を模した圧力をかける疲労試験をしたときの変化も手に取るようにわかる。

すると骨材とアスファルトバインダーの間で、分子間が引き合う強い結合になっているのかがうかがえる。その結果、老朽化しにくいアスファルト舗装の施工方法と材料を見つけ出すことができるのだ。

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文・写真=多名部 重則

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