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2026.02.07 15:00

父の教え、姉の優しさ。家族の支えを感じる腕時計:ダイヤ精機 諏訪貴子

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #32

諏訪貴子 

ダイヤ精機 代表取締役

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自分で腕時計を購入できるようになった今も、営業へ行く際は欠かさず着用。
お守りのような存在となっている。

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それは、突然のことだった。私が32歳だった2004年に、父が急逝。突然父の会社を引き継ぐことになった。一般企業から父の会社に入社はしていたが、経営の経験などあるはずもなく、毎日不安でしかたがなかったのを覚えている。

生前、父はいつも「人前に出るときは髪形を整え、時計と靴は一流のものを身に着けなさい」と言っていた。が、当時の私にそんな金銭的余裕はない。姉はそんな私の窮状を知ってか知らずか、ある日、自身の大切な腕時計をプレゼントしてくれた。それも、ベルトを私の好きなピンク色のワニ革に替えて。 

「ワニは一度かむと離さないから、チャンスをつかんだら離さないという縁起モノなの。これから大変だと思うけど、お父さんのためにも頑張ってね」。そう伝えてくれた姉をはじめ、家族の応援もあり、私は覚悟を決めた。売り上げの低迷、社員の高齢化など課題は山積だったが、社内改革を断行し、V字回復を成し遂げることができたのだ。

今でも、営業へ行くときには必ずこの腕時計を着ける。中小の製造業を取り巻く環境は依然厳しいが、この時計から姉の優しさ、家族の支えを感じ、勇気をもらっている。


すわ・たかこ◎1971年、東京都生まれ。成蹊大学工学部を卒業後、エンジニアとして一般企業へ就職。その後、父の経営するダイヤ精機に入社、2004年、父の逝去に伴い社長に就任。経営改革で業績のV字回復を果たし中小企業の再建のモデルケースに。また育児と経営を両立させる経営者としても注目された。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

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