キャリア・教育

2026.02.06 13:30

業界を超え通用する「五つの力」:田坂広志の深き思索静かな気づき

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第二は「異業種コラボレーション力」。異なった業種の人材とも円滑に協働できる力であるが、すべての仕事が異業種との協働であることを考えれば、これは、誰にとっても不可欠の能力である。

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しかし、この力の本質は、自分の専門領域だけに囚われない「視野の広さ」であり、相手の気持ちを推察できる「思考の深さ」であり、先を読んで動く「動きの速さ」に他ならないが、多くのビジネスパーソンは、この三つを理解していない。

第三は「共感的チームワーク力」。チームの仲間を励まし支援する力であるが、「仲間を励ます力」とは、そもそも、本人が仕事に自信を持っていなければ、いくら言葉で「頑張ろう」と言っても響かない。また、「仲間を支援する力」とは、本人が相応の仕事の能力を持っていなければ、仲間を助けられない。その意味で、この力も、素人的な仕事を続けてきた人間には発揮できない高度な能力である。

第四は「成長場リーダーシップ力」。メンバーが互いに学び合い成長する場を創る力であるが、一人のリーダーの周りに、こうした「成長場」が生まれてくるためには、絶対の条件がある。それは、そのリーダー自身が、誰よりも強い「成長意欲」を持っていること、そして「成長し続けている」ことである。そのとき、その後姿と横顔を見て、メンバーは自発的に「成長したい」と思い始め、そこに自然に「成長の場」が生まれてくるのである。

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すなわち、「まず自らが成長する」。それこそが、リーダーの最も大切な役割にもかかわらず、世を見渡せば、自身の成長を棚に上げ、「部下が成長しない」と嘆くリーダーが少なくない。

第五は「創発的プロジェクト力」。いかなる状況変化にも柔軟に対応してプロジェクトを推進できる力である。これは「体勢を崩しながらもヒットにもっていく」強かな現実対応力であり、「土俵際、俵、指一本」から押し返す粘り腰の力であるが、その背後には、絶対にプロジェクトの目的を達成するとの「思い」や「志」「使命感」が不可欠である。しかし、危機において、その「思い」や「志」「使命感」を語ることなく、ただ、メンバーに対して檄を飛ばすだけのリーダーも少なくない。

このように「五つの力」は決して容易に身につく力ではない。しかし、ひとたび、それを身につけるならば、いかなる業界でも活躍できるだろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国9200名の経営者が集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など、国内外150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

文=田坂広志

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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