景気後退のパラドクス
とりわけ目を引くのは、テクノロジーリーダーが経済不確実性にどう対応しているかである。調査では、CIOとCTOの95%が2026年の世界的な景気後退を懸念しており、そのうち54%は「非常に」または「きわめて」懸念していると答えた。それでも回答者の半数は、こうした懸念にもかかわらずAI投資を加速させているという。
この一見した矛盾は、現在の経済局面におけるAIの二面性を理解すると解ける。ローバックは、「価値のストーリーは2つあります。1つは上振れ、つまり増分収益のストーリーです。より賢い製品、より良いパーソナライゼーション、新しい売り方や顧客対応の方法。これは魅力的ですが、財務モデル化は難しいのです」と説明した。
もう1つのストーリーは、より直接的なコスト削減である。ローバックは、「AI駆動のサポートモデルでコスト構造を30%、40%、50%削減できるなら、単純な財務方程式になります。誰にでも理解でき、すぐに利益に反映されます」と語った。
“今日”のスプレッドシートで試算できる即時の効率改善
前述のような算術が、AIがムーンショットではなく景気後退への戦略として扱われている理由を説明する。多くの企業は、3年後に実現するかもしれない変革的成長に賭けるのではなく、今日のスプレッドシートで試算できる即時の効率改善を求めている。
だが、効率最優先のアプローチは、それ自体の問題も生む。スウェーデンのフィンテックであるKlarnaは、2024年に「AIアシスタントがカスタマーサービス担当者700人分の仕事をこなせる」と主張して話題になった。ところが2025年初頭までに方針転換し、CEOのセバスティアン・シェミアトコフスキは、AIだけに頼るやり方が「低い品質」のサービスとなり、顧客の不満を招いたと認めた。Klarnaは現在、人の担当者を再び採用しており、「quality human support」(人による質の高いサポート)を競争優位として打ち出している。


