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2026.02.05 13:30

日本人は本当に不幸か:川村雄介の飛耳長目

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やはり、私たちは不幸になってしまったのだろうか。

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オスカー・ワイルドの『幸福な王子』を知らぬ人はいまい。王宮で恵まれた楽しい生涯を送った容姿端麗な王子は、死して金箔に覆われた像になる。市の幹部の思い付きだ。目や刀のつばに宝石が埋め込まれた麗々しい像は、町の高みから人々を見下ろす。私にはバブル時代を思い起こさせる姿である。当時、日本人の多くは幸福感に浸っていた。「一億総中流」の幻想を信じ込んでいた。だが、やがてバブルは弾けた。金箔は剥がれ宝石の目玉も失った。しかも上述した現実が明らかになるなかで、人々の不幸感は増すばかりとなった。

『幸福な王子』は王宮生活のみでは、神に救われることはなかっただろう。ツバメも予定通り、故郷の南国に帰っていたら昇天しなかっただろう。彼らは、物質的な豊かさを失い利他を選んで幸せに気づいたのである。そこに何ら思いを致さず、王子像とツバメの遺骸を溶解・廃棄して自分の像を建てようとする市の幹部たちを、ワイルドは淡白な皮肉で活写する。

日本が輝きをなくしたとは思わない。しかし、その意識が市の幹部と同レベルでは真の幸福はやってこない。孫に絵本を読み聞かせながら、果たして自分は王子かツバメになれるのか、自問している新春である。

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川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事、公益財団法人 日本証券経済研究所 研究顧問。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。

文=川村雄介

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川村雄介の飛耳長目

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