米首都ワシントンで連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を終わらせようとする騒々しい動きにジェローム・パウエル議長が見舞われるなか、東京の沈黙は際立っている。
ここ数週間、ドナルド・トランプ大統領のホワイトハウスはパウエルに対する解任や脅しの試みをエスカレートさせた。それには、表向きにはFRB本部ビルの改修工事を理由とした起訴の脅しも含まれる。
パウエルは賢明にもそれをはねつけ、司法省が改修工事に焦点を当てているのはトランプがFRBを支配するための「口実」にすぎないと喝破した。
「刑事訴追の脅しは、連邦準備制度が大統領の意向に従うのではなく、公共の利益に資すると判断した最善の評価に基づいて金利を設定している結果です」。パウエルは公開したビデオメッセージのなかでそう訴えた。
パウエルの行動は国外から支持を集めた。欧州中央銀行(ECB)、英イングランド銀行、カナダ銀行、韓国銀行といった金融当局のトップらが一斉にパウエルを擁護した。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁を含む各国・地域の中銀総裁らは共同声明でパウエルへの「全面的な連帯」を表明し、「中央銀行の独立性は、わたしたちが奉仕する市民の利益のために物価、金融、経済の安定を支える礎です」と強調した。
元イングランド銀行金融政策委員のジョナサン・ハスケルは米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「米国に懸念や不安定さが生じることは誰の利益にもなりません」とコメントしている。「他国は米国資産を大量に保有しています。欧州の貯蓄者は間接的に米国の株式市場に投資しています。米国は多くの点で基幹エンジンの役割を果たしており、AI(人工知能)革命も進行中です。こうした状況が危険にさらされることは世界の誰も望んでいないのです」
だが、それは現に危険にさらされており、この危機はリアルタイムで進行している。だからこそ、日銀の傍観姿勢には大きな失望を覚える。世界で最も影響力の大きい中央銀行が前例のない攻撃を受けているのに、植田和男総裁率いる日銀のチームは押し黙ったままなのだ。



