人気料理人が「ミーム現象」となる韓国特有のポップカルチャー的展開

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そして、現在の人気を決定づけたのは、彼の独特な話し方だ。

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「私は煮込み人間です」
「俺だよ、エゴマ油」

これらのユニークなフレーズがSNSでテンプレート化され、「ヒューマン・ガンロク体」と呼ばれるミームとして拡散。自己紹介文、パロディ動画、ファンアート、さらにはダンス動画にまで応用されている。

優勝した『白と黒のスプーン』シーズン2の決勝戦でのテーマは「自分のための料理」だった。彼は「煮込み人間」「連続煮込み魔」「ジョリムピン(ジョリムは煮込み、ピンは韓国の人気キャラクターの名前)」との異名をとるほど、煮込み料理で知られている。

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そんな彼が自分のための料理として選んだのは、意外にも「ゴマ豆腐入り野菜スープ」だった。

その理由について、「煮込みが上手だと言われてきたが、実は得意な振りをしてきた。だから自分のための料理にはしたくなかった」と語った彼の言葉は、多くの視聴者に強い印象を残した。

また、「自分にはシグネチャー料理がない。日々同じことを繰り返す料理人の1人だ」という発言や、「再挑戦してよかった」という短い優勝コメントも、再起や再出発を考える人々の支持を集めている。

韓国特有のポップカルチャー的展開

また『白と黒のスプーン』という番組の人気も、出演シェフが腕をふるうレストランにも波及し、「黒白料理人シェフ巡り」が一種のレジャーとして定着している。ソウル中心部から地方、海外店舗まで含めたリストが拡散され、放送後には予約困難店が続出している。

一方で、「番組に出ていない良店が埋もれる」といった批判もあり、メディア露出が飲食業界に与える影響は大きいと議論を呼んでいる。

皮肉なことに、優勝者でありミームの中心人物であるチェ・ガンロク本人は、現在常設のレストランを持っていない。現在の活動は、メディア出演やコンテンツ制作、ポップアップイベントが中心で、「どこで彼の料理を食べられるのか」という問いがSNSで繰り返し話題となっている。

料理リアリティ番組発のスターシェフは日本でも珍しくない。しかし、「黒スプーン/白スプーン」という階層メタファーを前面に押し出し、料理人をミームとして消費する点は、韓国特有のポップカルチャー的展開と言える。

画面上の言葉遊びがSNSで跳ねる「踊り」となり、やがて現実の行列へとつながる。この現象は、コンテンツ産業と外食産業が密接に結びつく韓国市場を理解するうえで、たいへん興味深い示唆に富んだケーススタディとなっている。

文=アン・ヨンヒ

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