カルチャー

2026.01.27 16:15

江戸時代より美しいシルクを AIは養蚕をどうアップデートするのか

(写真左から)細尾真孝/HOSOO COLLECTIVE 代表取締役社長、北野宏明/ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニー CSL)代表取締役社長 / 沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授

(写真左から)細尾真孝/HOSOO COLLECTIVE 代表取締役社長、北野宏明/ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニー CSL)代表取締役社長 / 沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授

「日本の着物」に使われている絹糸の9割以上は海外産──。京都・西陣織の老舗「HOSOO」を擁するHOSOO COLLECTIVEの代表取締役社長/12代目の細尾真孝は、こうした現状を変革しようと、2025年11月、純国産シルクのサプライチェーンを再構築する大規模プロジェクト「KYOTO SILK HUB」を始動した。

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京都・与謝野町に新拠点を整備し、約15億円を投じて養蚕から生糸、織物、製品化までを一貫して手がける。AIやロボットなどの最新テクノロジーを導入し、今後10年をかけて、次世代型のシルク産業モデルの構築を目指す。

その技術面の中核を担うのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)代表取締役社長 / 沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授の北野宏明だ。AI・ロボティクス・システム生物学の第一人者である北野は、なぜ日本の伝統産業、しかも「養蚕」に関わるのか。異分野の協働から生まれる可能性を、2人の対談でひもとく。

伝統×テクノロジーの可能性

──今回のKYOTO SILK HUBで協働することになった経緯から教えてください

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細尾:4年ほど前、構想がまだ荒削りだった段階で、北野さんと会う機会があり、考えていることをお話したのが最初です。

北野:細尾さんの話を聞いて、率直に「面白い」と思いました。すごくロジカルで、意味のある挑戦だなと。

養蚕はかつて日本の産業を支えた重要な基盤でしたが、今では担い手も生産量も大きく減っています。ただ、グローバルなサプライチェーン全体を見渡した時に、「国内でもう一度取り組んでみる」という発想自体には、十分に合理性がある。しかも、「サイエンスとテクノロジーを前提に再構築する」という考え方です。ロボットやバイオ、データを使うというその全体構造がとても面白い。「なるほど、そうくるか」と思いました。

細尾:そこから数年かけてプロジェクトの解像度が上がっていくにつれ、構想を実現するためにどんな技術をどう実装していくか、どんなパートナーと組むべきかといった観点で、北野さんにアドバイスをいただいています。

北野:僕の専門領域はAIやロボット、システム生物学ですが、今すごく興味をもっているのは、「歴史と伝統(Tradition)」や「土着性(Terroir)」との掛け算です。伝統と土着性があるところに経営、ブランディング、資本調達なども含めた広い意味での「技術(Technology)」を組み合わせて、これを3Tと呼んでいますが、その価値を何倍にもあげていくことが、これからの日本がとるべき道の一つだと思っています。日本においては、伝統や文化の担い手は小規模事業者がほとんどで、たくさんモノをつくれないからこそ、その価値をどうやったら10倍、100倍にできるかを考えることが重要です。

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文=眞板響子 写真=山田大輔 編集=松崎美和子

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