──KYOTO SILK HUBで高品質なシルクができて流通するようになったら、どのようなインパクトが生まれるでしょうか。

細尾:今、国産シルクは本当に数が少なく、日本製の着物に使われている糸は99.5%が海外からの輸入品という状況です。そしてこれは本当に悔しいのですが、糸から国内でつくっていた江戸時代の着物のほうが、手触りでわかるほど圧倒的にクオリティが高い。今が最良なのではなくて、過去に軍配が上がるのは、経済合理性よりも美の追求が上位概念にあったからです。
今回のプロジェクトを通して、私はその頃のクオリティを美的に超えていけるようなものを届けたい。テクノロジーを合わせながら、今しかできないモノづくりをして、日本の着物の現状を変えていきたいと思っています。
そして、国内のみならず、世界のマーケットにも日本産のシルクを持っていく。今は白くて均一性が高いものが美しい絹とされていますが、先ほどお話しした「味」のように、もっと違う多様な美しさがあるはずなんですよ。蚕や糸の多様な特性を理解し、どう使い分けるか。評価軸自体の構築もやっていきたい。ただ高価なだけではない、本当に豊かなラグジュアリーシルクの領域を作っていけたらと思っています。
北野:非常に重要なのは、細尾さんのように、今ある工芸品の価値を上げること。価値が上がらないと、採算性の観点から、そもそもロボットやテクノロジーを導入しにくいのです。ここは非常に大事な点ですね。このプロジェクトが進んでいくと、例えば陶芸や他の伝統工芸、また農業などにも応用できると考えています。日本文化産業全体の価値を何倍にもできる可能性がある。その最初のショーケースがKYOTO SILK HUBだと思っています。


