銅の将来の供給を確保しようとする動きは過去最高水準の価格や企業のM&A(合併・買収)活動に顕著に表れている。だが、それ以上に重要な事態が視野に入りつつある。中国が銅の支配権を握る可能性だ。もしそうなれば、中国がレアアース(希土類)などの重要金属に関して行ってきたような締め付けが銅にも及びかねない。
17種類の金属元素の総称であるレアアースは「希少(レア)」でも「土(アース)」でもない。しかし現代の技術、とくに兵器に使用されることや、中国が供給の9割を握り、その市場支配力を貿易紛争などの際に「武器」として使うことも厭わないことから、西側諸国の政府は強い関心を寄せている。
中国による「非友好的」な国へのレアアース輸出制限で、これまで最も大きな影響を受けてきたのが日本だ。まさにいまも、他国を巻き込むおそれがある台湾有事をめぐる対立で同じ仕打ちを受けている。
レアアースは特殊な用途に少量が使用されるとはいえ、重工業や電化に不可欠なわけではない。たとえばドイツの大手自動車メーカーであるBMWは、レアアースを使わない電動モーターを開発した。
銅はレアアースとは異なる位置づけにある。建設から配管まで産業全般で広く使われており、あらゆる分野の電化に欠かせない金属だからだ。
銅なくしてAIなし
人工知能(AI)向けのデータセンターは、銅の大量供給がなければ整備を進めることができない。中国は銅の採掘に関してはレアアースの場合ほど支配しているわけではない。銅の最大の採掘国は、チリをはじめとする南米諸国だ。
だが、中国には銅の価格や供給に圧力をかけられる分野がある。銅の精錬だ。中国は銅の精錬済み製品の生産で50%のシェアを握る。
もっとも、世界最大の製造業大国である中国が銅に本格的に目を向ける前に、レアアースのような締め付けをしそうな金属はほかにある。タングステンの加工はすでに83%が中国の支配下にあり、アンチモンの加工は80%、リチウムの加工も75%を中国が握っている。
軍民両用途に使用されるこうした基本的な工業金属に共通するのは、中国がそれらの生産に投資してきた一方で、西側諸国は金融やソフトウェアといった分野へのシフトを急ぐあまり、その重要性を見失っていったことだ。
昔ながらの、ときに汚染を伴う生産工程を中国などの低コスト国に任せた代償は、ここへきて明白になりつつある。鉱山資産の争奪戦が起こり、精製・精錬能力を再構築しようとする動きも加速している。この立て直しには何年もかかるだろうし、もしかすると数十年要するかもしれない。



