教訓2:資本は、成果だけでなく長寿命を前提に構造化される
レポートで繰り返しみられるもう1つのテーマは時間軸だ。超富裕層が資本を管理するとき、極端に目先の成果だけを見て運用することはほとんどない。変動や移行、世代交代を乗り越えられる構造が築かれている。判断は「今うまくいくか」だけでなく、「時間が経っても持ちこたえるか」でも評価される。
健康に関していえば、意識的であれ無意識であれ、多くのリーダーは長期にわたる耐久力を犠牲にして、即時のアウトプットを最適化する。今日より多く働き、より多く生み出すことを可能にするものが優先され、そうしたアプローチの長期的な代償は後回しにされる。健康は「あとで対応すればいいもの」になり、多くの場合、向き合うことを余儀なくされるまで放置される。
富裕層の一族が長期間資本を守るために運や幸運に頼ることはない。まず回復力を設計し、最適化している。これを健康に当てはめると、持続的なパフォーマンスとは絶え間なく働くことではなく、体調を崩すことなくストレスを吸収できる仕組みを構築することによって得られる、ということを示唆している。
教訓3:資本には主体性と明確なオーナーシップが必要
レポートでは目立たないが極めて重要なテーマがある。それは責任の明確さだ。資本は決して「誰のものでもない状態」にはならない。意思決定権は定められ、監督は割り当てられ、説明責任は明確だ。重大な重みを持つものに対して、主体が曖昧な状態は負債かつリスクとして扱われる。
だが、ビジネスリーダーの健康はより受動的に管理されがちだ。責任はシステムや指針、あるいは規範へと委ねられることが多い。しかもそうした規範は高い成果を出すリーダーのために設計されたものではない。行動は意図からではなく、症状や能力低下、あるいは支障が出てからに由来する傾向にある。ハイリスクな環境で業務を行う人間にとって、自分の健康を自分で管理することは選択肢ではない。
レポートが示すように、富裕層の一族は自分の判断を外部に完全に丸投げしたり、問題が浮上するのを待ったりして資本を守ったり増やしたりするわけではない。早い段階から徹底したオーナーシップを取り、状況が変われば意思決定も見直す。健康に関しても結論は明確だ。望ましい結果を持続させるには、健康を放置するのではなく、能動的に管理するリーダーのほうが有利だ。
健康と富が本当に守ろうとしているもの
これらの教訓を合わせて見ると、共通するマインドセットが見えてくる。富裕層の一族が資本を厳格に管理するのは、金そのものに価値を置いているからではない。適切に管理すれば、資本が有限なものを守れるからだ。
レポートの中で、ある人はこう述べている。「人生の通貨は時間だ。金ではない。1ドルの使い方を慎重に考えるのなら、1時間の使い方も同じくらい慎重に考えるべきだ」。
資本の管理ミスは選択肢を奪い、健康の軽視もまた選択肢を奪う
この視点は富と健康の両方に対する考え方を改めるものだ。資本の管理ミスは選択肢を奪い、健康の軽視もまた同じように選択肢を奪う。どちらの場合も、代償はすぐには表面化しない。だが、やがて積み重なっていく。そうとらえれば、健康やフィットネスは単なる個人の趣味でも、仕事から離れる時間でもなくなる。リーダーが自分の最も限られた資源、つまり時間を守るための主要な手段の1つに変わる。


