「ユニコーン」を成功の基準にする時代は終わった
Anthropicは米サンフランシスコに本社を構えるユニコーン企業だ。同社のようなユニコーンは、シリコンバレーのスタートアップ・エコシステムがあってこそ成長するのだろうか。
世界経済フォーラムでイノベーター・コミュニティ部門長を務めるヴェレナ・クーンは、「シリコンバレーは依然として世界的なイノベーションと起業家精神の中心地であり、その状況は当面変わらないだろう」としつつ、「イノベーションは、もはや一箇所に集中していない」と話す。
「特にアジアのいくつかのエコシステムは、その人材の豊富さ、優れた大学、世界レベルの研究機関があるにもかかわらず、十分に評価されていない。北京、ソウル、東京のような都市は、特にAI、ロボティクス、ディープテックといった分野でますます重要なイノベーションの源になっている」(クーン)
一方で、「ユニコーンという言葉が持つ特別感は薄れてきている」と指摘する。
「(ベンチャー投資家の)アイリーン・リーが13年にユニコーンという言葉を生み出したとき、それは『評価額が10億ドルを超える非公開企業』という類まれな現象を指していた。それから10年以上が経ち、今や世界中に1,000社を超えるユニコーンが存在する。一部のスタートアップにおいては、市場にプロダクトを出す前の資金調達ラウンドでユニコーンの評価額に到達することもある。この傾向は特にAI分野で顕著だ」(クーン)
もはや評価額だけでスタートアップの成功を推し量ることには限界がある。クーンは「WeWorkのような大規模な失敗を経て、成長至上主義から持続可能で収益性のある成長へと焦点が移っている。年間経常収益(ARR)のような指標がますます引き合いに出されるようになったが、これらも完璧ではない。定義が一貫していない場合もある」と話す。
評価額という数字の羅列にとらわれるのではなく、持続可能で社会に真の価値をもたらすビジネスを築いているか━━。この問いこそが、激動の時代における企業の羅針盤である。


