経済・社会

2026.01.26 17:15

ダボス・リポート2026 (4) 実現まで「数年」か「10年」か──AGI開発のトップランナーが語る「安全性」と「スピード」のジレンマ

Q3. AGI(汎用人工知能)はいつ実現するのか?

AI関連のセッションのなかでも、ひときわ注目度が高かったのが「The Day After AGI」(AGIの翌日)である。登壇者はGoogle DeepMind共同創業者でCEOのデミス・ハサビスと、元OpenAIの研究者たちが立ち上げたAnthropic の共同創業者兼CEOのダリオ・アモデイ。AGI開発競争の最前線に立つ2人が、人間と同等もしくはそれ以上の知能を持つAIが登場する時期や社会的・経済的な影響、安全保障上の課題などについて対談した。

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AGI実現までのタイムラインについて、アモデイは数年以内とし、コーディングや数学の分野ではAIがAIを開発する「自己改善のループ」が機能し始めていると指摘した。すでにAnthropicの社内には、自分ではコードを書かず、モデルに書かせて編集するだけのエンジニアもいるという。

一方、ハサビスは10年以内に50%の確率で実現すると予想し、アモデイよりも慎重な見方を示した。創薬や材料科学などの自然科学分野では実験や検証が必要で、もうしばらく時間がかかるというのが主な理由だ。タイムラインに多少の違いはあるが、人類が歴史的な転換点を迎えつつあるという点では一致していた。

ここで重要な論点となるのが、米中間のAI開発競争の激化と、それに伴う安全性の問題である。AGIは世界各国の安全保障を根底から覆しうる技術だ。悪用される可能性は否定できない。

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特に強い危機感を示したのがアモデイだ。同氏は米政権によるチップ輸出規制の緩和を「北朝鮮に核兵器を売るようなもの」だと痛烈に批判し、最先端のチップを中国に売らないことが、AIの安全性を確立するための時間を確保するうえで重要だと主張した。

AGIの開発を遅らせるべきではないか。対談の最後にモデレーターからこう問いかけられたハサビスは、間髪入れずにこう答えた。「そのほうが世界のためになると思う」。しかし、彼らは開発のスピードを緩めることができない。独裁的な国家や、安全性を軽視する他のプレーヤーに先を越されるわけにはいかないからだ。

スローダウンしたくてもできない「囚人のジレンマ」━━。ここにAGIが抱える課題の核心がある。

遠くない将来、AIが人間の能力を凌駕し、私たちの社会構造や生活様式を根本から覆す日が訪れるかもしれない。そうなれば、ビジネスも社会も私たちの日々の暮らしも、その影響から逃れることはできない。ダボスで語られた彼らの言葉は、人類全体への警告のように映った。

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文=瀬戸久美子 写真=世界経済フォーラム

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