Q1. AIはキャリアのあり方をどう変えるのか?
1月20日に開かれたセッション「Corporate Ladders, AI Reshuffled」(企業の階層構造、AIによる再編)では、アラブ首長国連邦(UAE)の教育大臣、ノーベル経済学者、DeepLearning.AIの創設者、Cornerstone OnDemandのCEOが登壇し、AIによってエントリーレベルの雇用が失われることへの懸念、教育改革の必要性、企業の人材戦略のあるべき姿などについて議論がなされた。

「AIは人間の仕事を奪うのか」。世界中が関心を寄せている疑問だ。実際、AIの進化によってどの程度の雇用が失われるのだろうか。
この問いについては、登壇者の中で見解が分かれた。AIのエキスパートとして名高いDeepLearning.AI創設者のアンドリュー・ンは「AIのスキルを持つエントリーレベルの人材が不足している」とし、現状の高等教育のカリキュラムではAI時代の就職や仕事に備えることができない点が問題だと指摘した。例えば、コーディングの分野では「(自社では)今後、AIを活用できないエンジニアを雇うことはないだろう」と明言したうえで、教育のあり方の見直しを強く求めた。
一方、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE)経済学教授のクリストファー・ピサリデスは、エントリーレベルの人たちの約半数はヘルスケアやホスピタリティ、小売業界などAIの影響を受けにくい分野の仕事に従事していると指摘し、過度な悲観論を戒めた。他のパネリストからは「言語や数字を扱う仕事はすべて影響を受けるだろう」「法律や会計など専門分野にかかわる仕事はAIの影響を受ける可能性が高い」「幅広いAIスキルと特定領域の専門性を同時に身につけるべきだ」など、さまざまな意見が出た。
第2の論点は、「教育システムをどう改革すべきか」である。UAEで教育大臣を務めるサラ・ビント・ユセフ・アル・アミリは、同国が幼稚園から12年生(日本の幼稚園年少から高校3年生に相当)までのすべての公立学校の教育カリキュラムにAIの授業を導入した事例を紹介。幼稚園では「ロボット」という概念から始め、年齢が上がるにつれてプロンプトエンジニアリングや批判的思考などへと学びを深化させていくという。教育過程を通じて幼少期からAIリテラシーを段階的に身につけることについては、他国のパネリストからおおむね高評価だった。
年齢を問わず、自ら学び続ける人材を増やすことの大切さも話題にのぼった。「未来に向けて学ぶ力を身につける限り、絶対に損はしない。学校でスキルを身につけ、そのまま仕事に就き、同じ仕事をずっと続けるという考えは捨てなければならない」(ピサリデス)。
セッション全体を通して語られたのは、AIは雇用を奪うのではなく「再編」するというメッセージだ。AI時代に適した教育や人材育成の手法を構築できるかどうかが、包摂的かつ生産的な労働市場を築き上げられるかどうかの分かれ道だろう。


