だが、2025年に学術誌『Diversity』に掲載された論文が指摘する通り、実際の顛末はこれよりもはるかに複雑で、はるかに興味深いものだった。これによれば恐鳥類は、多くの肉食性哺乳類が南米に拡散するより前から、すでに衰退しつつあった。衰退の主要因は、環境変化だったようだ。
具体的には、新第三紀(中新世および鮮新世)の終盤に、気候変動(寒冷化)に伴って生態系が激変し、被食者群集の変化と、食物連鎖の再編が起こった。
恐鳥類が好んだ開けた環境は、一部の地域で拡大し、別の地域では縮小した。さらに、環境条件の季節変動も大きくなった。これにより、恐鳥類のように高度に特殊化した(つまり、特定の1つの狩猟様式に特化した)捕食者は、順応できなかったと考えられる。
肉食性哺乳類との競合が、恐鳥類の絶滅と無関係だったわけではない。だが、両者の関係は単純ではなかった。確かに肉食性哺乳類は、新たな狩猟戦略や社会行動、柔軟な食性を、南米の生態系にもたらした。しかし、フォルスラコス科のティタニス(Titanis)など一部の恐鳥類は、こうした哺乳類と長期にわたって共存した。このことから、直接的な競争排除(competitive exclusion:同じニッチを占める複数の種や系統は安定して共存できず、いずれ1つの種や系統がほかを排除するという、生態学における一般則)は、必ずしも即座に起こるものではないし、不可避のものでもないことが示唆される。
これらを考慮すると、恐鳥類の絶滅はむしろ、以下のような複数の進化的圧力が累積的に作用した結果である可能性が高い。
・生態的ニッチの縮小
・捕食できる獲物の変化
・もはや存在しない「過去の世界」に最適化した形態という制約
恐鳥類は、現代においても重要だ。なぜなら、覇権があくまで条件依存的なものであることを思い出させてくれるからだ。恐鳥類は、かつては高度に適応した捕食者だったが、環境変化により、そうではなくなった。その栄枯盛衰は、ある時点での進化的成功が、けっして系統の長期的存続を保証しないことを物語っている。
恐鳥類はまた、食物連鎖に関して私たちが持つ、「哺乳類中心の思い込み」にも異議を突きつける。数千万年にわたり、1つの大陸の王座に君臨してきたのは、大型のネコでもオオカミでもなく、鳥だった。この事実だけでも、一般の人にとっては意外なのではないだろうか。


