アルメニアと米国との関係
カフカス地方は天然資源に恵まれている。米商務省国際貿易局(ITA)によれば、アルメニアは鉄、銅、金、銀、アルミニウムなどの金属資源に富む。アルメニア政府は鉱物資源の開発を積極的に推進しており、ダイヤモンド加工業も発展している。米国はここに目を付け、マルコ・ルビオ米国務長官が13日、アルメニアのアララト・ミルゾヤン外相と会談し、トランプ回廊の実施枠組みについて協議した。その中には、石油・天然ガスパイプラインなどのエネルギー基盤の建設が含まれており、アルメニアに経済や雇用の機会をもたらすことが想定されている。一方の米国はトランプ回廊への初期拠出金に対して金銭的な見返りを得る。つまり、アルメニアがエネルギー産業の強化と経済成長を見込める一方で、米国も必要な天然資源を獲得し、投資に対する見返りを得ることになるのだ。
アルメニアが米国に接近している背景には、ロシアと距離を置いている状況もある。2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ロシアは深刻な経済的・軍事的損失を被っている。その結果、アルメニアなど歴史的にロシアと深く関わってきた国々は、国家安全保障の強化や貿易相手国の多様化、エネルギー安全保障の向上、ロシアへの過度の依存からの脱却を目指し、他の国々との関係拡大を図るようになった。ロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟していたアルメニアは現在、参加を凍結しており、最終的に脱退するとの憶測も広がっている。アルメニアがCSTOから脱退すれば、同国と米国との関係は一層強化され、中国への圧力が強まるだろう。
アゼルバイジャンと米国との関係
隣国のアゼルバイジャンも天然資源に恵まれている。ITAによれば、同国は石油と天然ガスの主要生産国で、パイプラインを通じて欧州に輸出しているほか、カスピ海と地中海で沖合石油・ガスプロジェクトに向けた探査を進めている。欧州がロシア産天然資源の輸入の段階的廃止を進める中、アゼルバイジャンはエネルギー供給国としての地位を高めつつある。
米国もアゼルバイジャンに強い関心を示している。トランプ回廊とは別に、アゼルバイジャンと米国は両国のエネルギー協力に関する詳細な計画についても協議した。米当局者は昨年12月、アゼルバイジャン・エネルギー省の代表者と会談。昨年年6月には米石油大手エクソンモービルがアゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)と覚書を締結し、同国の石油・ガス陸上鉱区の共同開発を推進することで合意した。
米国がアルメニアとアゼルバイジャンとの関係構築を怠れば、近隣のロシアとイランが両国の天然資源を支配する余地を与えることになる。ロシアとイランに支配権を与えれば、中国を強化することにもつながる。
米国はカフカス諸国との関係強化によって、複数の目的を達成することができる。まず、トランプ回廊に関連するさまざまな社会基盤整備計画により、地元住民の雇用を促進することだ。次に、米企業による投資と協力は、アルメニアとアゼルバイジャンの経済を活性化させると同時に、投資企業にも富をもたらすだろう。さらに、アルメニアとアゼルバイジャンはロシアとイランの影響圏から距離を置くことができるようになる。ロシアとイランの勢力が弱まれば、中国の立場が揺らぐことにもなり得る。最後に、アルメニアとアゼルバイジャンの天然資源の確保は米国のエネルギー安全保障を強化し、中国への圧力を強めることができる。
米国がエネルギー自立の強化を目指す上で、アルメニアとアゼルバイジャンは貴重なパートナーとなり得る。トランプ回廊が今後どのように発展していくのか、各方面から関心が集まっている。


