フィジカルAI革命における欧州の役割
フィンクが、この変革で欧州がどんな役割を担うのかとフアンに迫ると、その答えは欧州の政策担当者に響くはずのものだった。「皆さんの産業基盤はとても強いです」とフアンは強調した。「欧州の産業製造基盤は信じられないほど強いのです。いまこそ、ソフトウェアの時代を超えて主導する機会です」。
ソフトウェアの時代は米国が主導した。しかしAIはゲームを変える。AIはプログラムするより教えることが中心になり、フィジカルAIが大きな最前線として立ち上がりつつある。そうなると、製造業と深い科学に強い欧州の伝統的な強みが戦略的な優位になる。「ロボットは欧州諸国にとって、一世代に一度の機会です」とフアンは語った。
ただし前提がある。エネルギーインフラだ。フアンはこの要件について率直だった。「エネルギー供給を増やすことに本気で取り組まなければならないのは、ほぼ確実です。そうすればインフラ層に投資でき、ここ欧州に豊かな人工知能のエコシステムを築けます」。
これは多くの地域が向き合うべき議論である。AIインフラには大規模なエネルギーが要る。そのエネルギー供給力を整えられない、あるいは整えようとしない国や地域は、AI経済の基盤層に参加できなくなる。危険なのは、AIインフラの構築者ではなく、AIサービスの恒常的な消費者になってしまうことだ。
アプリケーション層の爆発が実際に意味すること
フアンが示した指標の一つは、ベンチャーキャピタル(VC)の投資動向である。2025年は世界でVC資金が1000億ドル(約15兆5700億円)超となり、史上最大級の投資年の一つになった。だが重要なのは、その資金がどこへ向かったかである。医療、ロボティクス、製造業、金融サービスなどでアプリケーションを作る、AIネイティブ企業(AIを前提に設計された企業)に向かった。
「初めて、モデルが『その上に』構築できるほど十分に良くなりました」とフアンは説明した。ここが、AIが研究上の好奇心から経済エンジンへ移る瞬間である。アプリケーション層への投資が爆発すると、その需要は5層すべてへ連鎖的に波及する。
この連鎖的な需要こそが、なぜ数兆ドル(数百兆円)規模のインフラ投資が必要なのか、なぜチップメーカーが数十の新工場を建てているのか、なぜエネルギーが戦略資源になるのか、そしてなぜ熟練技能を持つ技能労働者(熟練工)が突如として大きな需要を集めるのかを説明する。「そうした技能労働者の層は、ここ欧州ではとても厚いです」とフアンは述べた。「多くの意味で、米国は過去20〜30年でそれを失いました」。


