共生社会の実現に向けて、住まいはどのような価値を担えるのか。東京建物がヘラルボニーと制作した「Brillia Art Piano」は、その問いへの挑戦から生まれた。「Brillia」が共創で描く、豊かな暮らしのかたちとは。
東京建物が展開するマンションブランド「Brillia」。都会的なデザインを基調にしながら、街と人の営みに想いを馳せ、練り上げられたストーリーを感性に響く豊かなデザインへと昇華させてきた。独創性と温かみを併せもつ住空間づくりは高く評価され、これまで数多くのデザイン賞を受賞している。
Brilliaのブランドコンセプトである「NEW LUXURY RESIDENCE」が示すのは、物質的な豪華さではなく、一人ひとりが自分らしい豊かさを感じられる暮らしだ。この視点は住戸の内側にとどまらず、街や都市空間のあり方へも向けられてきた。建設現場の仮囲いをアートで彩り、街の風景の一部とする取り組みや、東京・京橋に設けたアートギャラリー「BAG − Brillia Art Gallery −」(2025年10月閉館)は、その取り組みの一例である。これらの活動は、不動産デベロッパーとして物理的な建物をつくるだけでなく、街の歴史や文化に加え、そこに住まう人や利用する人々の心の豊かさを醸成したいという意思でもあった。
東京建物がヘラルボニーと共創した背景には、ヘラルボニー契約作家の作品そのものの魅力と、同社の思想への共感がある。作品が放つ圧倒的な存在感、そして観る者の心に寄り添うしなやかさという稀有な両立は、住まいや街の空間に豊かな価値をもたらす。また、多様性を認め、違いを価値に変えていくヘラルボニーの思想は、Brilliaがブランドとして発信している「自分らしい豊かさ」という価値観との親和性が高いと考えた。
共創の第一歩となったのは、東京建物が運営するアートギャラリーのこけら落としの展覧会だ。会場には作家たちが描いた絵画や、アートを日常にプロダクトとして展開するブランド「HERALBONY」のアイテムなどが展示された。その空間は「誰もが違いを認め合い、自分らしくいられる世界」というヘラルボニーの思想を提示するものであり、来訪者は鮮やかな色彩が放つエネルギーに魅了されると同時に、あらゆる人々が共存する社会の豊かさを肌で感じることとなった。
以降、東京建物とヘラルボニーの共創は、Brilliaオーナー向けファブリックの商品企画や「Brillia Art Piano」へと広がっていく。「Brillia Art Piano」に命を吹き込んだのは、岩手県のるんびにい美術館に在籍する作家・八重樫道代。空間に置かれたときの佇まいが風景を一変させるだけでなく、行き交う人たちの足を止め、新たな会話を生み出す。このピアノは、街や住まいが「人と人をつなぐ媒介」となる可能性を体現する“旅するアートピアノ”として、成田空港第3ターミナルやハイアットハウス金沢などを巡り、今も多くの人々の日常に触れ続けている。
アワードへの協賛で
作家の次のステージをつくる
東京建物はヘラルボニーが主催する国際アートアワード「HERALBONY Art Prize」へ参画し、作家が次なるステージへ飛躍するための環境づくりを支援している。同アワードは世界中から「異彩」が集うプラットフォームであり、才能ある作家が正当に評価され、キャリアにつなげていくための重要な足掛かりとなっている。同アワードに設けられた「東京建物|Brillia賞」では、作品を評価するだけでなく、アートが日常に息づく場を創出することで、作家の表現が社会へと広がる新たな循環を目指している。
初年度である2024年の受賞作品、内山.Kの《赤と青の世界の地図》は仮囲いアートに採用され、建設現場を巨大なキャンバスへと変えた。さらに、ドリームホールディングスが展開するアート×防災グッズ「sonae備絵」とのコラボレーションにより、受賞作品を取り入れた新商品が誕生。
「sonae備絵」は、アート作品の裏に災害時トイレキットを収め、平常時は住まいの空間を彩り、非常時には防災グッズとして機能する。アワードへの参画は25年も継続され、世界65カ国・地域から寄せられた2,650点もの応募のなかから、インドネシアを拠点とするアマンダ・アンジェラ・ソエノコの《The Mystic's Dreams(神秘主義者の夢)》が「東京建物|Brillia賞」に選出された。
同作品は、都内各地の建設現場を彩る仮囲いアートとして実装され、現在、新たな街の風景をつくり出している。日本国内にとどまらず、海外作家の表現を日本の都市空間へとつないでいくこうした試みは、Brilliaが掲げる多様な豊かさの概念を、より国際的、かつ重層的なものへとアップデートしているといえるだろう。
東京建物は今後、受賞作品を開発物件のエントランスや共用部といった住まいの象徴的な場所へと展開し、アートが日常にある風景を広げていく構想を描いている。それは空間を洗練させるだけでなく、アートが観る人の心を動かし、自分らしく、心豊かに過ごすためのきっかけになると考えているからだ。ヘラルボニーとの共創は、住まいをはじめ、東京建物が手がける街づくりにおいて「共生社会」を実現するための挑戦ともいえる。Brilliaならではの新しい住まいのかたち。その進化はこれからも続いていく。
東京建物 │ Brillia
https://www.brillia-art.com/
本記事は、Forbes JAPAN 2026年3月号別冊『ヘラルボニー現象』に掲載されています。




