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2026.01.29 11:00

公共交通の提供価値を高める東急電鉄の挑戦

※安全を確保のうえ、車庫にて撮影

※安全を確保のうえ、車庫にて撮影

「人へ、街へ、未来へ。」をスローガンに掲げる東急電鉄は、ヘラルボニーとの共創によってその思想をさらに深めた。作家・中島敏也が描く沿線風景はアートラッピング電車となって街を走り公共交通がもたらす価値と、これからの都市体験を問いかける。


2025年11月、東急東横線・田園都市線に、人目を引く鮮やかなアートラッピング電車が登場した。描かれているのは、ヘラルボニー契約作家・中島敏也(写真中央。以下、中島)による東急線沿線の日常を映し出した街の風景だ。テーマは、東急電鉄が掲げるスローガン「人へ、街へ、未来へ。」。広報・マーケティング部統括部長の稲葉弘(写真左。以下、稲葉)は「多様性を表現しながら、我々が大切にしている価値や思いを大きな包容力をもってかたちにすることができた」と語る。

同社は1922年を設立年とする東急(旧・東京急行電鉄)から、2019年10月に鉄軌道事業専業会社として分社化し、その際、3つの思いを込めたスローガンを策定した。

「1つ目は『人』を大事にすること。これはお客さま、従業員などかかわるすべての人の笑顔や幸せを大切にするということです。2つ目は『街』を強く意識すること。街あっての鉄道であり、“鉄道のある街”を前提にしています。3つ目は『未来』に向けて、これまで培ってきたレガシーを受け継ぎながら、サステナブルな成長へとつなげていくという意志。そして最後は、余韻を残すことで受け止めた方が自ら思いを巡らせてほしいという思いから『へ。』としています」(稲葉)

分社化と同時に掲げた新スローガンだったが、直後のコロナ禍により対外的な発信は停滞を余儀なくされる。そうした状況を経るなかで、2024年9月、東急主催の社員向けセミナーに、ヘラルボニーの共同代表である松田文登が登壇した。

「ヘラルボニーさんとは渋谷を中心に東急グループとして取り組みをご一緒したこともありました。ただ、それまでは個別の企画にとどまっていました。セミナーでは社会性と事業性を両立させながら価値を生み出す姿勢や、多様性を前提に社会と向き合う考え方が示され、東急グループが大切にしてきた考え方と重なる部分が多いことを改めて認識しました」(稲葉)

このセミナーをきっかけに、東急電鉄のなかでも分社化の際に掲げたスローガンを具体的な施策として社会に示し、共感を生んでいく必要があるという認識が共有されていった。その表現のあり方を検討する過程で、同社は理念を共有できるパートナーとしてヘラルボニーに声をかけることになる。

沿線の価値を描く、共創のプロセス

ヘラルボニーのプロデューサー鎌田亮太朗(写真右。以下、鎌田)は、オファーを受けた当時を次のように振り返る。

「作品が電車というメディアを通して、人々の暮らしのなかに溶け込んでいく。それは、アートに触れる方が圧倒的に増えると同時に、私たちの活動をより広く知っていただく機会にもなります。そして何より、沿線風景を絵画としてともに制作していけることに、作家の中島さんも、私たちも、大きなやりがいを感じました」(鎌田)

中島は具象画を得意とし、電車をはじめとする乗り物に強い関心をもつ作家だ。制作にあたっては、仙台を拠点とする中島が東京に足を運び、実際に東急線に乗車。沿線の街を歩きながら、その土地の空気や風景から着想を深めていった。完成した作品を目にした稲葉は、予想以上の出来栄えだったと語る。

乗り物好きの作家・中島敏也は、東急東横線・田園都市線に乗車し、沿線の街や人々を自身の目で確かめ、その体験を数多くの作品として表現。
乗り物好きの作家・中島敏也は、東急東横線・田園都市線に乗車し、沿線の街や人々を自身の目で確かめ、その体験を数多くの作品として表現。

「中島さんの作風は存じ上げていましたが、良い意味で期待を大きく裏切られました。東急線沿線にある独特の豊かさや美しさ、優しさ、潤い、活気、包容力といったものは、文字や写真ではなかなか伝えにくい。しかし、中島さんは、優しく温かみのあるタッチで、沿線の価値を見事に表現してくださいました。これはアートでなければ実現できなかった成果だと実感しています」(稲葉)

アートラッピング電車は、東急線にとどまらず、相互乗り入れする各路線でも運行(※2026年1月現在)。神奈川から東京、埼玉までの広域なエリアを網羅する。その狙いについて稲葉は次のように話す。

「私たちは東急線沿線が精神的に豊かで、優しさや潤いのある街であってほしいと願っています。ラッピング電車はその価値を『見える化』する手段のひとつです。そして、その思いを東急線沿線にとどめるのではなく、相互乗り入れする路線の街へ、さらには社会全体へと共感が広がっていけば、このうえない喜びだと考えています」(稲葉)

東急田園都市線二子玉川駅周辺の景色や、そこに集う人々も繊細に描写。中島は沿線の風景などを全14作品描いた。
東急田園都市線二子玉川駅周辺の景色や、そこに集う人々も繊細に描写。中島は沿線の風景などを全14作品描いた。

公共交通という不特定多数の人々が日常的に利用する空間で価値観を表現することは容易ではない。とりわけ、運行エリアを広げることは多様な受け止め方と向き合うことを意味する。それでもなお、この思いを広域で共有しようとした姿勢に、同社が交通インフラを、メッセージを社会に発信するための媒体として有効だととらえていることが表れている。実際、今回のラッピングでは、デザインに対するネガティブな声は届いていないという。これは、本プロジェクトがあらゆる価値観にも受容される表現であったことを示していると言えるだろう。

共創が生んだ、もうひとつの価値

ヘラルボニーとの共創による本プロジェクトは、社員の意識にも変化をもたらしていると稲葉は話す。

「東急電鉄として何を大切にしているのかを、部門や役割の違いを超えて共有していけると感じています。私たちの思いをラッピング電車という目に見えるかたちにしたことで、社員一人ひとりが自分の仕事とどうつながっているのかを考えることができる。結果、お客さまや社会に価値を届けていくという点で、同じ方向を向けると感じています」(稲葉)

「渋谷にある109の景色がお気に入り」と中島。
「渋谷にある109の景色がお気に入り」と中島。

ヘラルボニーにとっても、今回のプロジェクトは、共創の意味を改めて実感する機会となった。

「中島さんは仙台在住ですが、今回は上京し、実際に東急線に乗り降りしながら街を歩きました。作家の方々は普段、街に出る機会がそれほど多くありません。そうしたなかで、作家さん自身の行動範囲が広がったことを、私たちはとてもポジティブにとらえています。当初は想定していなかった気づきでしたが、こうした変化が今後も生まれていけばと思っています」(鎌田)

今回の取り組みを受けて、東急電鉄では次の展開についての検討も始まっている。

「例えば、地域の方々や子どもたち、障害がある方々が、アートや電車、東急線沿線の場を通じて触れ合い、学び合える機会を、さまざまな方面を巻き込みながら進めていければと考えています」(稲葉)

電車という交通インフラを、移動の手段としてだけでなく、人や思いが行き交う場としてどう活用できるのか。今後の展開に注目が高まる。

アート作品は1車両に5作品起用。車内にも中島の作品が掲載されたポスターが掲示されている。※安全を確保のうえ、車庫にて撮影
アート作品は1車両に5作品起用。車内にも中島の作品が掲載されたポスターが掲示されている。

東急電鉄 特設サイト
https://www.tokyu.co.jp/special/hitomachimirai-train/


稲葉 弘◎東急電鉄広報・マーケティング部統括部長。1992年東京急行電鉄(現東急)入社。財務、商業施設の総支配人、リテール部門・マーケティング部門、経営企画・社長室などを経て22年より現職。

中島敏也◎仙台市在住。2011年多夢多夢舎所属。ペンを使った細やかな筆致で日常にあるものを「ロボット」にして描き始める。その後は写真を見ながら、イラストや似顔絵を描くのが好きになった。

鎌田亮太朗◎ヘラルボニーアカウント事業部ビジネスプロデューサー。COOONでCOOを務め多様な事業を推進した後、ヘラルボニーに参画。知的障害のある作家のアートを軸に事業プロデュースを行う。


本記事は、Forbes JAPAN 2026年3月号別冊『ヘラルボニー現象』に掲載されています。

Promoted by 東急電鉄│text by Tetsujiro Kawai│photographs by Takayuki Abe│edited by Aya Ohtou(CRAING)