北米

2026.01.26 14:30

トランプが「12人目の億万長者」起用、「米国製造業の復権」を掲げるFTC委員に利益相反の壁

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事業以外の活動にも軸足を広げ、政治分野では不法移民を保護する制度を支持

近年、マクニールは事業以外の分野にも活動の軸足を広げている。その1つが政治だ。彼は2018年、「DACA」を支持すると公に表明し、この制度に賛成しない共和党の政治家には献金しない考えを明らかにした。「DACA」は、幼少期に親に連れられる形で米国へ移住した不法滞在者について、強制送還から守る制度だ。「私自身が移民として育ったからこそ、他人事として割り切れない問題だ」と、マクニールは語る。

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一方で、トランプ政権の現在の移民政策については踏み込んだ評価を避けている。そのうえで彼は、「移民法は、議会が結論を出し、法律として改めるまでは、理性と配慮をもって運用されるべきだ。法律が場当たり的に適用されるようなことがあってはならない」と述べるにとどめている。

利益相反の懸念に対し公正な判断を約束し、承認手続きに向けて身を引くと主張

またこの1年ほど、マクニールは、オンラインで販売される製品にも原産地表示を義務づけるべきだとして、以前から主張してきた「原産国表示を巡る新たなFTCの指針」の必要性を、公の場で繰り返し訴えてきた。

その声は、大統領にも届いたようだ。トランプ大統領がマクニールを指名したことで、彼はこれまで唱えてきた主張を、制度として具体化する立場に就く可能性が出てきた。FTCは、消費者を不公正で反競争的な企業活動から守ることを使命とする、政府機関の中でも影響力の大きい存在だ。業界を問わず、ほぼあらゆる分野を監督し、取り締まる権限を持つ。

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大統領は2025年5月、マクニールを産業・製造業の競争力強化を担う特別職に指名していたが、この役職は権限が限られており、上院が期限内に採決を行わなかったため、年初に指名は失効している。

マクニールの求めがFTCの指針として実現した場合、WeatherTechにとって明確な追い風

当然ながら、ここで問題になるのが利益相反だ。マクニールが求めてきた原産地表示に関するFTCの指針が実現すれば、「米国製」を前面に掲げるWeatherTechにとっては明確な追い風となる。FTCはまた、米国製と偽って表示した企業を摘発する権限も持ち、2024年にはウィリアムズ・ソノマに317万ドル(約4億9000万円)の罰金を科していた。

ただし、取り締まりに使える人員や予算には限りがある。ある分野を重点的に取り締まれば、その分、別の分野への対応は後回しになる。

「どこまでが許容されるのかは必ずしも線引きが明確ではない。ただ、特定の規則変更を求めてロビー活動をしてきた人物が、その同じ規則について委員として判断を下す立場に就くのは、外から見れば公平とは言い難い」。そう語るのは、ジョージ・W・ブッシュ政権下でホワイトハウスの倫理担当弁護士を務めたリチャード・ペインターだ。

ペインターはこう続ける。「連邦取引委員会が扱う案件の大半は、WeatherTechに直接的で予測可能な影響を与えるものではないだろう。それでも、本人が米国製を巡る規則について強く働きかけてきたのであれば、その分野に関する案件からは距離を置くべきだ。トランプ大統領がFTCを使って、より国家主義的で保護主義的な方向へ政策を動かそうとしているのなら、なおさら問題が生じかねない」。

利益相反や、その疑念を和らげる手段も存在する。一般的なのは、特定の案件に関する判断から本人が身を引くことだ。より例外的な方法としては、関係する資産をブラインド・トラスト(公職に就く人物が個人資産の管理・運用を独立した第三者に移すための信託)に移す、もしくは売却するという選択肢もあるとペインターは説明する。ただし、非上場企業の場合、ブラインド・トラストは現実的に機能しにくいとも指摘している。

しかし、マクニール自身は、こうした懸念を気にしていない。「私は、すべての人にとって利益にならないことは何もしない。忠誠を誓う相手がいるとすれば、それは米国民だけだ」と語る。彼は、FTCの委員に就任した場合、WeatherTechの日常的な経営からは一歩身を引くつもりだという。

「もし少しでも利益相反の恐れがある状況に近づいたら、私はその案件から身を引き、政府の法務担当者や上司に相談し、どう対処すべきか助言を求める」とマクニールは言う。その上で、彼はこう続けた。「仮にWeatherTechが、ほかの米国メーカーと同じ枠で扱われることになったとしても、それは問題ではないはずだ。より良い法律や情報開示は、消費者全体に利益をもたらす。私はそれを利益相反だとは考えていない」。

マクニールは、積極的に会社の売却を模索しているわけではないものの、すでにいくつかの買収提案を受けていると明かし、「私はいつも、犬と娘と妻以外なら何でも売ると言っている」と冗談を飛ばした。ただし、会社を手放す場合は、買い手がWeatherTechの「卓越性と顧客第一の哲学」を引き継ぐ覚悟を持っていることが条件になるという。

もっとも、それはまだ先の話だ。少なくとも今のところ、マクニールは上院での承認手続きに向けた書類作業を始めたばかりで、この状況そのものを楽しんでいる。トランプ大統領による自身の指名が明らかになるや否や、マクニールはForbesに宛てたメールで、「『David MacNeil FTC』で検索してみてほしい。驚くことになる、腰を落ち着けてからどうぞ」と冗談めかして述べていた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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