1994年から米国内での製造を重視する姿勢を貫き、WeatherTechの製品はすべて国内で生産
世間が「米国製造業の強化」という主張に注目するはるか以前から、マクニールは米国内での製造を重視し始めていた。1989年に会社を立ち上げた彼は、1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)が発効し、企業の海外移転が一気に進み始めた年に、米国製製品の販売を開始した。その後も国内生産の比率を徐々に高め、現在ではWeatherTechの製品はすべて、イリノイ州内にある11の自社工場で生産し、原材料もすべて米国内で調達している。
「当社は生産工程のほぼすべてを自社で担っている。社員向けの食事も社内で用意し、芝生の手入れも自分たちでやる」とマクニールは語る。「樹脂加工も自前だし、設計からエンジニアリング、金型や製造設備の開発まで、すべて社内で完結させている」。
トランプの質問に、「中国で生産するよりも米国人に仕事を提供することが大切」と答える
マクニールは、屋外広告やスーパーボウルのテレビCM、トランプが当選する前に開かれた支援者向けの昼食会の場でも、米国内での製造を訴えかけてきた。その昼食会で、当時まだ候補者だったトランプが、隣に座るマクニールにこう問いかけたという。
「デービッド、中国で作れば、もっと利益が出るはずだ。なぜ中国で生産しないんだと、彼は言った」とマクニールは振り返る。「私は、中国の製造業を後押しすることよりも、米国人に仕事を提供する方が大切だからだと答えた。彼は、その答えをとても気に入っていた」。
2期目のトランプ政権が導入した関税政策は、結果としてWeatherTechを一部の競合企業より有利な立場に置いている。しかし、「自動車関連分野では、関税が確実に収益を圧迫している」と話すのは、金融アドバイザリー会社GAグループのマネージングディレクター、ダン・ダイチマンだ。関税は主に完成車や部品を対象としてきたが、WeatherTechが販売する車両用アクセサリーなどにも打撃を与えており、2025年前半には業界全体で利益率が最大4%押し下げられたという。
WeatherTechの利益率もわずかに低下しているが、下げ幅はおよそ2%にとどまっており、マクニールはその理由として、インフレによるコストの上昇と、プラスチックの原料となる石油価格の高騰を挙げている。輸出品に対する報復関税の影響も、売上の約95%を米国内から得ているWeatherTechにとっては大きなものではない。「WeatherTechは、縮小する市場の中でより大きな取り分を確保している」とマクニールは語る。
企業価値が約3720億円に上るWeatherTechと、マクニールが所有する個人資産
WeatherTechのシェア拡大は、マクニール自身の資産も押し上げている。Forbesの推計によれば、マクニールが全株式を保有するWeatherTechの企業価値は24億ドル(約3720億円)に上る。彼はまた、個人で少なくとも3億2000万ドル(約496億円)相当の不動産を所有しており、その多くは、2016年から移転を進めてきたフロリダ州にある。その内訳としては、パームビーチ近郊のウェリントンにある娘名義の2700万ドル(約42億円)相当の邸宅や、最近購入したマナラパンの7500万ドル(約116億円)の大邸宅が挙げられる。
加えて、約350台に及ぶ自動車コレクションの価値は4億ドル(約620億円)超に達しており、マクニール自身は「実際には5億ドル(約775億円)近い」と話す。ジェット機や小型機、ヘリコプターを含む航空機の価値は9000万ドル(約140億円)に上り、その多くを本人が操縦している。「空を飛ぶことこそが私が本当にやりたいことだ」と彼は語る。
マクニールはこのほか、イリノイ州やフロリダ州に所有する商業用不動産を、ビール工場や自動車部品の業者、ピザ店などの中小事業者に賃貸している。
過去10年間で約775億円を納めた創業者として、「産業としての力を維持すべき」と強調
これら彼の投資の多くは、WeatherTechの事業利益を原資としたものだ。2020年にプロパブリカが入手・公開した税務資料によれば、マクニールは2016年から2018年にかけて、約1億8000万ドル(約279億円)を自身への報酬として受け取っていた。直近の報酬額については明らかにしていないものの、2019年以降は事業への再投資を増やすため、大幅に引き下げたと説明する。また過去10年間で、自身とWeatherTechが納めた税金の総額は「5億ドル(約775億円)をはるかに超える」とも語っている。
どんな話題でも、最終的には「米国の製造業を守りたい」という自身の熱のこもった主張に結びつけるマクニールは、WeatherTechの成功は「自分個人の利益にとどまらず、国全体にとって意味があるものだ」と強調する。
「我々は産業としての力を維持しなければならない」と、彼は価格設定の話の途中で付け加えた。「物を作る力を失えば、社会が立ち行かなくなる。現在の米国は、芝生を刈ったり、髪を切ったりするサービス業ばかりの国になってしまったのだから」。


