経済・社会

2026.01.29 08:15

【SIIF加藤有也寄稿】「システム思考」が切り拓くインパクト投資の未来

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両者の共通点から学べること

金融システムと課題システムという起点の違いはあるものの、両者に共通しているのは、システム思考を用いて課題の複雑性に向き合っている点です。前者は資金の「量的拡大」を、後者は投資家が果たす役割の「質的向上」を担っており、両者は相互に補完し合う関係にあると言えるでしょう。

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また、インパクトの目的を、受益者の変化にとどめず、システム全体にもたらしたい変容とそのプロセスにまで広げている点も共通しています。そして何より重要なのは、競争を超えた「協働」のマインドセットです。

では、日本のインパクト投資家は、この「システムレンズ」を手にすることができるのでしょうか。筆者は、その可能性は十分にあると考えています。国内のエコシステムには、先進的なインパクト投資家がこれまで蓄積してきた「協働」と「学習」の文化が存在するからです。

SIIFでは22年以降、システムチェンジの実現を中期事業戦略の中核に据え、地域活性化、機会格差、ヘルスケアの領域で、協働を通じた概念開発と実証を進めてきました。例えば、地域活性化の分野では、エーゼログループと連携し、地域課題の構造分析とTheory of Changeの策定に取り組んでいます。その成果の把握には、SCI-Japanと協働し、「地域社会」のウェルビーイングを捉える新たな指標の開発も進めています。また、機会格差の分野では、ジェンダーペイギャップをテーマに、三菱UFJ信託銀行他との連携によるマルチステークホルダー勉強会を開催し、継続的な対話の場づくりを行っています。

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これらの取り組みは、まだ端緒についたばかりです。しかし、インパクト投資の黎明期と同様、実践を通じたプロトタイピングを知見へと昇華させることで、より多くのプレーヤーによる自律的な展開につながることが期待されます。

システム思考に基づく多様なアプローチと、協働による本質的なインパクトの創出。インパクト投資家は、そのリーダーシップの一翼を担う存在になり得ます。その未来は、すでに私たちの目の前に現れ始めています。


加藤有也◎社会変革推進財団(SIIF)事業部長/インパクト・オフィサー。総合出版社にて海外事業や国内外関連会社の企画に従事した後、コーポレート・ベンチャーキャピタルの設立・運営およびベンチャー企業との資本業務提携に携わりました。当財団では、インパクト投資やインパクト・スタートアップ支援の先行事例作りと実践的モデルの開発を目指し、はたらくFUND(日本インパクト投資2号ファンド)の運営、インパクト測定・マネジメントのモデル策定と普及、新たなインパクト投資事業の開発などを担当しています。経営学修士。

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