経済・社会

2026.01.29 08:15

【SIIF加藤有也寄稿】「システム思考」が切り拓くインパクト投資の未来

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課題システムからのアプローチ

もうひとつは、投資家自身が多様な経済主体と連携し、社会・経済システムの変容を直接的に主導する「課題システムからのアプローチ」です。

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その代表例が、スイス・Transcap Initiative(Transcap)が主導する米国中西部で再生可能農業の実現を目指すプロジェクトです。一般的なインパクト投資では、アグリテック・スタートアップへの投資や農業従事者への融資といった個別的なアプローチが想起されがちです。しかしTranscapは、地域の自然・経済・社会資本を一体のシステムとして捉え、多層的なアクションを試みています。

その特徴は、主に5つに整理できます。ひとつに、投資戦略へのシステム思考の活用です。投資先個社のアウトカムにとどまらず、システム全体の変革仮説(Theory of Change)を策定し、複数の打ち手を組み合わせることで、ポートフォリオ全体での相乗効果を目指しています。

ふたつめは、ファイナンス手法の多様性です。再生可能農業への移行を妨げる資本と事業のミスマッチを解消するため、株式・融資・助成金を組み合わせる「ポリ・キャピタル(複数の資本)」戦略を採用しています。Transcap自身は資金の「指揮者」として機能し、農家の長期的ニーズに即した柔軟な資金提供を可能にしています。

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3つ目は、システムレベルの変化の把握です。システム変化の兆候、資本の流れ、再生可能農業によるアウトカムという三つのカテゴリーでデータを収集し、進捗を可視化すると同時に、将来の投資判断に資するエビデンスの構築を進めています。

4つ目は、多様なプレーヤー間の連携です。投資家を含む20の主要組織からなる「デザイン評議会」を組織し、「システムを共同設計する」プロセスを通じて、分散型リーダーシップを前提とした協働を実践しています。

最後は、公共セクターへの働きかけです。民間の実践から得られたデータや教訓を政策設計に還元することで、民間資本と公共政策の相乗効果を高めることを目指しています。

次ページ > 両者の共通点から学べること

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