現在発売中のForbes JAPAN1月23日発売号の第二特集は、「新たな豊かさ」を生み出し、持続可能な経済成長の新主役とも言える「インパクト・エコノミー」をテーマにした「IMPACT THE NEW CHAPTER Vo.2」。今回、フォーカスするのは、社会課題の解決を成長のエンジンととらえ、持続可能な社会の実現を目指す「インパクトスタートアップ」だ。インパクトスタートアップの「1年間の経営におけるチャレンジ」を表彰する「インパクト・チャレンジ・オブ・イヤー」という新企画を中心に、金融・資本市場、大企業、スタートアップ、官、地域で拡張し、「新章」を歩みはじめた日本のインパクト・エコノミーの新潮流を読み解いていく。
今回、WEBオリジナル記事として、日本でのインパクト投資業界の中心的存在である社会変革推進財団(SIIF)の事業部長/インパクト・オフィサーである加藤有也氏に寄稿いただいた。
日本におけるインパクト投資は、この十数年で急速な拡大を遂げてきました。GSG Impact Japanによれば、確認された投資残高は17兆3000億円に達しています。ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)やスタートアップ投資を起点に、上場株式、デッドファイナンス、不動産など多様なアセットクラスへと投資対象が広がり、参入主体も着実に増加してきました。
また、インパクト志向のアクションは民間投資にとどまらず、スタートアップや政策当局によるリーダーシップへと波及しつつあります。「インパクト・エコノミー」と呼びうる新たな経済のあり方の萌芽が各所に見られる点は、特筆すべき動きです。量的拡大という観点では、インパクト投資は大きな成功を収めてきたと言えるでしょう。
一方で、社会・環境課題の現実に目を向けると、必ずしも本質的な解決には至っていない領域が多いのが現状です。人口減少による経済・社会システムの維持困難は、地域交通や高等教育の縮小といった形ですでに顕在化しています。気候変動についても、その深刻化が人類の経済活動と無縁ではないことは、もはや否定できない段階にあります。
こうした危機感は、グローバルな金融界においても共有されています。米Thinking Ahead Instituteが2025年に実施した機関投資家調査では、アセットオーナーの88%が「システムレベルのリスクは今後、規模化・高頻度化・相互依存化する」と予測し、73%が「複雑性のマネジメントは経営上の最重要課題である」と回答しました。
もし、課題の本質的解決や、ありたい社会の創造を投資の目的に据えるのであれば、「良い企業への投資」にとどまらず、課題構造全体を俯瞰し、投資家自身の役割を改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。



