リーダーなら「Seeing around corners(角を曲がった先がどうなっているかを見る)」という表現にはすぐにピンとくるだろう。インテルの創業に関わったアンディ・グローブはこの言葉を使って同社が競合他社に先駆けて戦略的転換点を予測したことを説明した。戦略の研究を専門とする学者たちは先見性やセンスメイキング(意味づけ)、早期の気づきについて語るときに、これに近い言葉を用いる。コンサル会社も不確実性の中で舵取りをする経営者らに助言するとき、この言葉を持ち出す。
だが広く知られているわりに、この考え方は実務においては奇妙なほど用いられていない。
大半のリーダーは、変化の先取りは価値あるものという考えに同意する。だが「実際にどうやってそれをやっているのか」を語れる人ははるかに少ない。
地政学的ショックやテクノロジー分野の加速、そして脆い前提が特徴の環境において、このギャップはこれまで以上に重要になっている。
EY-Parthenon(EYパルテノン)の最近の調査は、多くの企業がいかに無防備になっているかを明確に示している。EYと英オックスフォード大学サイード・ビジネススクールの共同研究によると、主要な変革のほぼすべてに重大な転換点が少なくとも1つ含まれるという。そうした転換点のおおよそ半分は、社内の実行の失敗ではなく外部からのショックによって引き起こされる。にもかかわらず、政治・地政学的リスクに対する自社の無防備さを完全に把握できていると答える最高経営者(CEO)は少数にとどまる。
問題は知性の欠如ではない。早期の認識の欠如だ。
「うまく反応する」だけでは不十分である理由
多くのシニアリーダーは反応に非常に優れている。プレッシャーの中で決断を下し、チームを素早く結集させ、何かがうまくいかないときに安定を取り戻す。こうした能力は、ほとんどのキャリア制度において報われる。そして、権限のある立場に上り詰める理由にもなりやすい。
だが反応がうまいことと、早い段階で予期することは同じではない。
多くのリーダーシップの失敗は、リーダーがその瞬間にお粗末な判断をしたために起きるのではない。失敗が起きるのは、リーダーがその状況に遭遇するのが遅すぎたからだ。すでに戦略的な選択肢が狭まった後にその場にたどり着く。そうなると、対応は急を要し、コストがかかる。制約も伴う。
後から振り返ればこうした失敗は突然に見える。だが実際には、かつて機能していた前提が静かに崩れるにつれて徐々に進行する。
問題は、変化の初期のシグナルがめったに明確な形で発せられないことにある。



