地政学が変革の中心に
地政学的な混乱の加速によって、このパターンの維持は一層難しいものになっている。
EYパルテノンの最近の地政学に関する見通しは、政治リスクや政策の転換、地政学的再編が、いまや多くの業界で変革の中心的な要因になっていることを浮き彫りにしている。CEOたちは、地政学的混乱が近い将来の事業環境を形づくる最も重要な要素の1つになるとの予想を強めている。にもかかわらず、多くのCEOはいまだに自社の仕組みが実際にどれほど影響を受け得るのかを可視化できていない。
地政学的なショックは単純なものではない。技術やサプライチェーン、規制、人口動態、資本の流れといった要素と予測不能な形で絡み合う。影響が完全に見える頃には、対応は戦略的というより反応的になりがちだ。
こうした状況では、先見は「あればいい能力」ではない。リーダーに求められる必須要件だ。
先見は予測にあらず
「角を曲がった先がどうなっているかを見る」ことがとらえどころのないものである理由の1つは、それが往々にして予測と混同されることにある。リーダーは、先見とは他者より正確に未来を予測することだと思い込む。
実際には、先見はまったく別のものだ。
早く気づき、より注意深く解釈し、選択肢がまだ存在するうちに動くことだ。不明確さを拙速に潰したくなる衝動に抗うことだ。過去にうまく機能してきた前提を問い直すのをいとわないことだ。
そして何より、先見は不確実性の中での判断力のことだ。
だからこそ、落ち着きが重要になる。不安定な環境では、不安は判断のスピードを速める。落ち着きは選択肢を広げる。不明確さに長く耐えられるリーダーは、より良い判断を下すための余地を確保する。落ち着いたリーダーシップは受動的ではない。意図的なのだ。
上級職では、落ち着きは能力として解釈されることが多い。行動しなければと周囲が圧力を感じているときは特にそうだ。
不安定さから優位性へ
リーダーの反応が遅いと不安定さはリスクになる。リーダーが早く動けば優位性になる。
先見は時間を生む。時間は選択肢を確保する。選択肢は優位性を生む。
変化に早く気づく企業は不都合な事態を回避するだけではない。他社がまだ説明している間に動き始める。いち早くアイデアを試す。筋書きが固まる前に立場を固める。まだ選択があるうちに意思決定を行う。
これは未来を予測するということではない。未来が到来したときに、完全に無防備ではないようにするということだ。
こうしたことから、いま最も有用なリーダーシップの問いは「次に何が起きるのか」ではなく、「何を早急に言い抜けているか」だ。
角を曲がった先がどうなっているかを見ることは、答えではなく注意と共に始まる。
解釈を急がず、自分の確信を疑い、明確になる前に動くことをいとわないリーダーにとって、先見は希望ではなく習慣になる。予告なしに混乱が起きる世界では、その習慣は最も価値あるリーダーシップの能力かもしれない。


